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2022.02.02 15:46
長崎県波佐見町で波佐見焼の食器やインテリア雑貨を企画・販売するマルヒロは2021年10月1日、店舗・カフェ・公園からなる複合施設「HIROPPA(ヒロッパ)」を同町にオープンした。施設の総合計画は、建築・デザイン事務所 DDAAを率いる元木大輔が手がけた。
プロジェクトは、江戸時代から磁器づくりが盛んに行われてきた同町で、地元住民が集い、賑わいを生む場を作りたいというマルヒロの思いからスタート。同社は、町の子どもたちが遊びにきたくなる公園のような場所を求めたという。
そこで、公園のようなグランドを核に、レストハウスのようなカフェ、マルヒロの商品を販売する直営店を併設したマルチパーパスの施設を計画し、広場と原っぱを掛け合わせた造語「ヒロッパ」と命名。
老若男女・不特定多数の人が訪れることを想定し、安全面への配慮やメンテナンスのコストを考えて、ジャングルジムやブランコといった遊具をあえて設置せず、パークというよりは広場に近い存在を目指したそうだ。
変形扇型をした平坦な敷地の南側の大部分は広場に充て、敷地内の南東の隅に向かって勾配が下がるように土を盛ることで、丘陵のような稜線を作り出した。もっとも窪んだ隅には廃棄される波佐見焼を砂状に粉砕して敷き詰め、砂浜の風景を作り、残りの敷地は芝生で覆った。
さらに、敷地の南西側には、高床式建築のように二層のパーゴラを設置。柱・梁・桁を組んだだけの壁を持たないもので、内とも外とも定義できない中間的な空間だが、開かれた「ヒロッパ」を特徴づけるテーマとなっている。
子どもたちは、遊具がなくても、傾斜によって地面を駆け上り、高低差を利用して高いところから低いところに寝転がって遊ぶなど、思い思いに場と関わることができる。元木は、「ここで僕たちがデザインしたのは、遊具というより『地面』そのものです」と述べている。
「整備された公園や遊具がなかったころ、遊びは形式的に決められた行為ではなく、それ自体を発見するようなものだったはず」だったという同氏。「ヒロッパ」においても、「プリミティブに遊びを発見できる環境」づくりを目指したと語っている。