ウイルス禍前にインドを訪れたとき、近年の技術、建築、デザイン分野における進展を感じると同時に、地域によっては依然として残る環境衛生面での問題も目の当たりにした。そのような状態にあるからこそ、同国のエンジニアやデザイナーは社会課題の解決に並々ならない意欲と決意を持って取り組んでいる。
インド人建築家のコディ・スーディーンもそんなひとりとして、自国を含む世界各地で問題化している安全な飲料水の確保という課題解決のために、カラウォーター社を共同設立。大気中の水分から飲料水をつくり出す「カラピュア」を開発した。この製品は、湿度60%の環境において約2時間で1リットルの水をつくり出す能力があり、1日あたり最大で10リットルのアルカリ飲料水(pH9.2+)を生成すると同時に、除湿や空気清浄もできるという。
実は、大気中の水分を飲み水に変える「アトモスフェリック・ウォーターディスペンサー」と呼ばれるカテゴリーの製品は、すでに先行するいくつかの企業によって販売されている。しかし、それらの製品が冷媒を用いて空気中の水分を液化するのに対し、カラピュアは乾燥剤に似た働きをする天然素材を用いることで、騒音を出さずに水をつくり出すことに成功した。
また、既存製品は、一般的なウォーターディスペンサーと同じく樹脂製筐体を採用し、形状も似たり寄ったりだが、カラピュアは丸みを帯びたステンレス外装を採用し、清潔さを保ちやすく高級感のある印象を与える。
価格はクラウドファンディングでの先行予約でも1,349ドルと決して安くはないものの、電力さえ確保できれば配管や水の補給、配送用の樹脂ボトルなどが不要で安全な飲料水を生成できるため、湿度の高い熱帯・亜熱帯地方ではもちろん、さまざまな場所での需要を見込めそうだ。