FEATURE | サイエンス
2021.12.28 11:00
サスティナブルであることが社会の潮流になってしばらく、多くの研究機関や企業が環境により良いものを生み出すべく、うまずたゆまず努力をしています。
当特集では、2021年に取りあげた最新の研究から環境に配慮した、新素材をご紹介。
素材を活用したユニークなプロダクトにも注目です。
AIR-INK®
炭素をアップサイクルしたインク「AIR-INK®」
MITメディアラボ発のスタートアップ企業 Graviky Labsが、排出された炭素をアップサイクルしたインク「AIR-INK®」を開発。炭素を収集して有害物質を取り除き、生成された使用可能な炭素をインクにするそうで、パッケージやクレジットカード、アーティスト向けのインクに活用されています。
- 研究元
- Graviky Labs
- 紹介記事
- 大気汚染物質「PM2.5」問題に取り組む排出された炭素をアップサイクルしたインク「AIR-INK®」
炭素をアップサイクルしたインク「AIR-INK®」
マッシュルームレザー
インドネシアの発酵食品テンペをヒントにした「マッシュルームレザー」
インドネシアの企業 Mycotech Labが開発した、キノコの菌糸を使った「マッシュルームレザー」。同国発祥の発酵食品「テンペ」の製造方法にヒントを得た素材です。廃棄物を原料としており、環境負荷をかける製品の代替物になりうるとしています。また、製造施設をキノコ農家内に設置して、キノコの扱いになれた地元住人の雇用も実現するそうです。
- 研究元
- Mycotech Lab
- 紹介記事
- インドネシアの発酵食品テンペをヒントにMycotech Labが素材「マッシュルームレザー」を開発
インドネシアの発酵食品テンペをヒントにした「マッシュルームレザー」
kome-kami
食べられなくなったお米を活用した紙素材「kome-kami」
1890年に奈良で創業したペーパルが、食べられなくなったお米を活用した紙素材「kome-kami(コメカミ)」を開発。紙そのものがもつ豊かな風合いにお米の質感が加わることで、ラフでありつつもしっとりとした表面に仕上がっています。色はとれたての艷やかなお米を思わせるナチュラルな白さで、ノートや名刺といった用途を提案しています。
- 研究元
- ペーパル
- 紹介記事
- 廃棄されるお米を活用した新しい紙素材「kome-kami」
廃棄されたお米を活用してできた紙素材「kome-kami」
光キャパシタ
植物の葉に埋め込まれる光るナノ粒子「光キャパシタ」
米マサチューセッツ工科大学の研究チームが、植物の葉に特殊なナノ粒子を埋め込み、LEDをあてることで光を蓄える発光植物を発表。この「光キャパシタ」となるナノ粒子が光子として光を蓄え、時間が経つにつれて徐々に光を放ちます。大きな葉が発光すれば、街路樹が「街灯」になることも夢ではないかもしれません。
- 研究元
- マサチューセッツ工科大学
- 紹介記事
- 植物の葉が光を蓄えて照明になる!? MIT研究者が新しい「発光植物」を発表
植物の葉に埋め込まれる光るナノ粒子「光キャパシタ」
英セントラル・セント・マーチンズとLVMHが手がけるプラットフォーム「Maison/0」
英セントラル・セント・マーチンズとLVMHによる、「再生するラグジュアリー(regenerative luxury)」のためのプラットフォーム「Maison/0」から、MAバイオデザインコースの学生が手がけた、天然のものを有効活用したユニークな素材を紹介します。
1.Algae Palette
大型藻類から抽出した色素「Algae Palette」
「Algae Palette」は、大型藻類から抽出した色素で染色したテキスタイルプリントのコレクション。絞り染めなどの伝統的な技法を用いることで、藻類の染料により絹や綿のプリントをコントロールでき、化学染料や有毒な染料を減らすことができるとしています。
2.Excessories
水中に浮遊して処理できない粒子を活用した「Excessories」
「Excessories」は、生地の染色で発生する、水中に浮遊して処理できない粒子を活用したもの。魚介類の廃棄物の殻から得た抽出物を繊維染料の廃水にくわえると、反応により水から色素粒子が分離され、きれいな水と着色されたバイオポリマーが得られるとしています。これを利用して、テキスタイルデザイン向けのラグジュアリーなバイオスパンコールや装飾を作るそうです。
3.Hyphae Hues
菌類でできた非毒性の染料「Hyphae Hues」
「Hyphae Hues」は、菌類でできた非毒性の染料を使うことで、染料業界から排出される数多くの化学物質が海や湖、河川に流れ込まないようにします。赤から黄色までの色は、菌類が成長する環境を調整することで自然と制御でき、菌類の自己形成や、スクリーン印刷やスタンプで模様をつけることも可能だそうです。
- 研究元
- セントラル・セント・マーチンズ
- 紹介記事
- 「再生するラグジュアリー」の開発を目指す英UALとLVMHのプロジェクト「Maison/0」
英セントラル・セント・マーチンズとLVMHが手がけるプラットフォーム「Maison/0」
カクタスレザー
サボテンの葉から作る素材「カクタスレザー」
スニーカーブランドのCLAE(クレイ)が、サボテンからできた「カクタスレザー」を使ったシューズ「BRADLEY CACTUS」を発売。自生で水分をほとんど必要としないサボテンは、資源が枯渇してしまう心配もなく、まさにサスティナブルな素材です。しなやかで通気性に優れ、耐久性も兼ね備えているのが特徴です。
- 研究元
- CLAE
- 紹介記事
- サボテンからできたカクタスレザーを使ったスニーカー「BRADLEY CACTUS」
サボテンの葉から作り上げた素材「カクタスレザー」
Common Sands – Forite
電子ごみのガラスをアップサイクルした「Common Sands – Forite」
スノヘッタとStudio Plastiqueによる「Common Sands – Forite」は、電子ごみに含まれるガラスのリサイクルと、その活用の可能性を探る共同研究プロジェクト。できあがったガラスタイルには、ユニークなパターンや表情があります。また、材質はテラゾに似ており、幅広い建築用途に向いているそうです。
- 研究元
- スノヘッタ
- 紹介記事
- 電子ごみのガラスでタイルを作るスノヘッタの「Common Sands – Forite」