宇宙での長期滞在のための食料を生産する研究
「袋型培養槽技術」による栽培実験が行う

▲地上での袋型培養槽による栽培状況

JAXAは、竹中工務店キリン千葉大学東京理科大学と共同で、将来の月探査などで長期宇宙滞在をするときの食料生産に向け、世界初となる宇宙での袋型培養槽技術の実証実験を国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟内で実施した。

▲「きぼう」内の実験装置の設置場所

月や火星などでの人類の活動領域の拡大への機運が高まるなか、JAXAは、地球からの補給に頼らず、月面で農場を設営し、長期滞在のための食料を生産する研究を行っている。

2017年より実施している袋型培養槽技術の共同研究は、小型の袋の内部で植物を増殖させるもので、密閉することにより雑菌の混入を防ぎ、臭気発生がないコンパクトなシステムを作ることができる。設備も簡易でメンテナンスしやすく、省エネルギー性もあるので、人数に合わせた数量調整も可能だ。

▲密閉した袋内で栽培されたレタス(上:収穫前の様子、下:地上に回収する前の様子)

▲実証実験用栽培装置

今回の実験では、2021年8月27日(金)から10月13日(水)までの48日間、培養液の供給や空気交換を行いながら、レタスの生育を促進。9月10日(金)にはレタスの本葉が確認され、その後も順調な生育を続けて収穫にまで至ったという。

栽培装置は、大きさ(幅44㎝×奥行35㎝×高さ20㎝)と重量(5kg)を抑えつつ、3袋の栽培が可能。内部には、ISSの飲料水から培養液を作成し、無菌化して各培養袋へ供給できる給液システムと、生育状況を定期的に自動撮影できるシステムが備わっている。

▲月面農場モデルイメージ

今後は、生育したレタスと培養液、生育の様子を撮影した記録を回収して、宇宙での適用の可能性やこの栽培方式の優位性を評価する予定。また、育ったレタスに食品衛生上の問題がないかや、栽培後の培養液を分析して環境制御・生命維持システムで再利用処理ができるかも確認することにしている。End