NEWS | 建築
2021.09.29 17:00
中国山東省泰安市にこのほど完成した「The Hometown Moon」は、建築家 Zou Yingxiが率いる中国・北京の建築設計事務所 SYN Architectsが手がけた新しいセレモニーホールである。
泰安市には、ユネスコの世界遺産に登録されている「泰山」という有名な山がある。しかし、さまざまな建物は各地に点在しているため、地域振興を促すには十分機能していないという。
そこで、今回のプロジェクトでは、この55平方キロメートルにおよぶ山間部をつなぐとともに、地元の生活と産業の発展、さらには環境にも配慮した新しい体験を訪れた人に提供する、長期的で包括的なアプローチが求められた。そして、「Hometown Moon」という建築を中心として、この山岳地帯や周辺の村々を活性化させることを目指した。
この地には、80年代にヒットさせた曲「Hometown Cloud(故郷的雲)」がもたらすノスタルジックな雰囲気があるそうだ。Zou Yingxiはこうしたイメージをヒントに、けっして沈むことのない月が輝く、日常から逃れるためセレモニーホールをデザインしたという。
現代でも雲と月は場所にかかわらず、ノスタルジーを呼び起こすことができる。そこで、抽象的な幾何学的形状とシンプルな素材を組み合わせることで、中国の古い時代の華やかな表現を感じさせながら空間を作り上げた。
ロケーションは、渓流のそばにある建築物「Hometown Cloud」を見渡す展望テラスに決定。山頂から眺めると、人工的な「故郷の月」と空の月のあいだに対話が生まれ、周囲の環境に溶けこんだ、谷間の完璧な美しさを楽しむことができる。
また、「Hometown Moon」に到着して「Hometown Cloud」のほうを振り返ると、今度は故郷の雲を懐かしむ感情が生まれるそうで、互いに補いあう象徴的な建築となっている。