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2021.09.23 11:00
私たちがなにか新しいことを知るときには、行動する前に誰かに説明してもらえばよりよく学べるとされている。ところが、スイス連邦工科大学チューリッヒ校の最新の研究チームによると、事実はどうやら正反対であるらしい。つまり、説明よりも先に「生産性のある失敗」をすることで人はより学ぶことができるようなのだ。
研究チームでは、過去15年間に行われた数学、物理学、化学、生物学、医学の教育関連の研究を分析。これらはいずれも、説明してから実践するのか、それとも実践してから説明するのかなど、どの学習戦略がより効果的かを考察したものだったという。
この分析によると、「理論を学習する前に練習に取り組む場合、優れた教師が1年間の指導を行うよりおよそ2倍も効果的」で、さらに学生が練習段階で「生産性のある失敗」をした場合、優れた教師に1年間教わるよりも3倍の学習成果を達成することができるのだ。
では、その「生産性のある失敗」とはどんなものだろうか。研究チームが挙げるポイントは4つの「A」である。まずは、ある問題が関連する知識をどれだけ「活性化させる(Activate)」か。つまり、ある程度の事前知識がある場合、「生産性のある失敗」が起こりうるのである。
そこから、知っていることに対して、まだ知らないことがあるという不足への「気づき(Awareness)」、さらには、新しい概念をより受け入れ、問題を解決することへの興味をかきたてる「感情(Affect)」の変化が生じる。
そして、最終段階に教師や教材が登場する。新しい概念では問題を解決することができるのに、採用した解決方法ではどうしてうまくいかなったのか、その理由の説明、すなわち知識の「構築(Assembly)」が求められる。
学習成果を挙げるには、教えるときにこれら4つのメカニズムがすべて重要な役割を果たすという。ただし、こうした成果は、専門知識がない小学生よりも、分析的な推論や問題解決能力をある程度身につけた中高生や大学性によく当てはまるとしている。