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2021.09.16 16:40
中国・上海に2021年7月、世界最大級の新しい天文博物館「上海天文館」がオープンした。訪れた人が本物の天文現象にじかに触れることができるような、没入型の体験を提供するのが特徴だ。
設計は、米ニューヨークを拠点にする建築設計事務所 Ennead ArchitectsのThomas Wongが手がけた。広さは約39,000平米を誇り、その大きさだけでなく、形状や照明により、太陽と地球の軌道運動の関係性について深く知ることができるという。
外観は宇宙の姿や天体の動きを反映したもので、直線や直角を使わない野心的な建築デザインを目指した。そこで、ニュートン力学の古典的な「三体問題」にインスピレーションを得て、太陽系において複数の天体の重力が引き起こす複雑な運動に着目。
これにより、曲がりくねったリボンのようなファサードができあがった。こうした博物館の形状だけでなく、オクルス(眼窓)、球体、鉢型のドームという同館のデザインの3つの主要な要素が合わさって、太陽、月、星という運動する天体を表現している。
メインエントランスの頭上にあるオクルスからは日光が差し込み、時間の経過を知ることができる。夏至の正午には、日光が広場にあしらわれたサークルと完全に一致するそうだ。
一方、内部がプラネタリウムシアターとなっている球体は、建物に半分沈んだようなデザイン。目に見える支持体をできるだけ少なくすることで、無重力や反重力といった幻想的な印象を与えている。
また、中央アトリウムの屋上にある、皿のようなドームはガラス張りの構造で、訪れた人は見晴らしのよい空の景色を眺めることができる。
Thomas Wongは、「この建築に取り組むとき、私たちは施設のミッションと建築が完全に融合し、宇宙を形成するさまざまな基本原理を形状として表現することを目指しました」と語る。
「上海天文館の壮大なアイデアは、館内に入る前であっても、デザインを通して同館のテーマを直感的に体験させることでした。この建築をたどることで、訪れた人は最後に大空と直接向かい合う、という最高の瞬間に立ち会うことになります」と述べている。