ハイブリッドな嗅覚センサーが開く 新たな自動化の世界

「モノのインターネット」ことIoT機器が一般消費者の生活のなかにも増えるにつれ、それらが機能する際に周囲の情報を取得するセンサー類も、視覚、触覚、温度、湿度など、さまざまな発展を見せてきた。しかし、例えば、警察犬や空港の麻薬検出犬のような働きをするロボットなどをつくるうえで、嗅覚を置き換えるセンサーを開発することは至難の業と考えられてきた。

「ニューロン(神経細胞)こそが、究極のデータプロセッサである」と考えるナイジェリアの科学者、オシュ・アガビが創業し、ナイジェリア語で「不死」を意味する企業名を持つコニークは、この難題に挑戦し、生きた神経細胞と電子回路を融合することで、生物の鼻と同じ仕組みによって匂いを嗅ぎ分けられるセンサーの開発に成功。粘液膜を模した独自の液体のなかに保持される神経細胞は2年間にわたって生き続けることができ、これを組み込んで製品化された嗅覚デバイス「コニーコア」は、すでに実際の企業における利用が始まっている。

その利用範囲は、空港やエアバス機内での麻薬・爆発物検出から、バドワイザーやコロナビールの親会社であるアンハイザーブッシュによる飲料の香り試験まで多岐にわたっており、新型コロナウイルスの有無も匂いを利用して感知できるところまできているという。

嗅覚を意味するオルファクトリーセンシングの世界では、すでに、これまで考えられなかった分野に自動化、ロボット化の恩恵をもたらしたコニークの後に続くバイオ企業も出てきており、今後、競争が激化していくことが予想される。End