東京オリンピックの正式種目となったことで、コアなファン以外からも新たな注目を集めたスケートボード。特に男女ともに日本人選手が金メダルを獲得した「ストリート」競技は、街なかの階段や手すり、縁石、ベンチ、壁、坂道などを模した構造物が配されたコースで行われる目新しさもあって、興味を持つ子どもも多かったようだ。
しかし、日本でも公園や広場などに行けばわかるが、現実の世界ではストリートにおけるスケートボードは公共物にダメージを与えることから禁止されているところが多く、他の通行人などにとっては危険ですらある。スケートボードパークを内包するユニークな「F51 オリンピック・スタンダード・スケートパーク」ビルを建設中のイギリス南東部の町、フォークストーンのスケートボーダーたちも同じジレンマを抱えており、専用設計の「パーク」とは異なるストリートで滑走してトリックを決める醍醐味を、合法的に味わえる方法を模索していた。
2010年から建築、デザイン、アートなどの分野で横断的な活動を行ってきたクリエイター集団、アッセンブルは、F51の運営も行うかたわら、クリエイティブ・フォークストーン・トリエンナーレ 2021のコミッションワークとして「スケーティング・シチュエーションズ」という屋外スペースを整備。これは、ストリートで見かける公共の構造物をモチーフとするアート作品を配したオープンエリアで、スケートボーダーはこれらを自由に使ってトリックを披露できるようになっている。
また、鉄材と組み合わされた石材は、スケートボーダーコミュニティの意見も参考にしながら近くの海岸から集められた自然石が使われており、港町として発展してきたフォークストーンの雰囲気を盛り込む工夫もなされた。
オリンピックのストリート競技に刺激されてスケートボードを始めた若者たちが無差別に街なかを練習場としないためにも、スケーティング・シチュエーションズのような試みが世界各地に広まることに期待したい。