NEWS | サイエンス
2021.08.30 15:45
米スタンフォード大学では、化学工学を専門とする研究チームが新たな素材の開発に取り組んでいる。それは、ゴム状の皮膚のようなシートに、伸縮性や柔軟性をもつ高密度のトランジスタアレイをプリントした素材である。
研究チームによると、1平方センチメートルの伸縮可能な集積回路に40,000個以上のトランジスタを埋め込むことができ、その数はさらに2倍まで増やすことができるという。
柔軟な電気回路でありながらも、性能としては従来のディスプレイに使用されているトランジスタとほぼ同じであり、皮膚センサーや埋め込み型のバイオチップなどの簡素な回路を作るのには十分なものとなる。
さらに、回路を縦や横にもとのサイズの2倍に引き伸ばしても、素材には亀裂や剥離、性能の低下が見られず、1,000回も繰り返し引き伸ばしても、トランジスタの電気的性能は変わらないなど、その耐久性や性能も確認されている。
たしかに、シリコンチップでは同じ面積に数十億個のトランジスタを埋め込むことができるが、シリコンチップと同じ製造機器で作ることができるので、新たな製造プロセスを構築する必要もないようだ。
また、フォトリソグラフィというこの製造プロセスでは、たくさんの複雑な工程があり、耐光性材料を洗い流す化学物質が伸縮性回路の基盤となるポリマーも洗い流してしまうおそれもあった。
そこで、研究チームは新しい光化学プロセスを開発することで、従来のシリコンチップ製造に必要ないくつかの工程を省けるようになり、効率的かつ低コストで柔軟な回路を製造できる可能性があるとしている。
研究チームでは、トランジスタの密度を向上させることで、このフレキシブルな回路を使った、これまでにないアプリケーションを実現できるのではないかと期待している。