「清水の舞台」の床板が、鍵盤楽器のクラヴィコードに再生
清水寺への奉納を記念し、『silk road - 祈りの道』展 開催

京都市 東山区、清水寺では、2008年から大改修が始まり、国宝である本堂では、屋根の檜皮(ひわだ)の葺き替え、舞台床板の張り替えなどが2020年12月に完了した。

▲張り替え前の清水寺本堂舞台(画像上)と床(画像下)

「清水の舞台」として知られる本堂の舞台には今、木曽ヒノキの新鮮な香りが漂う。舞台の総面積は約190平方メートル、つまり、張り替えで役割を終えた板もほぼ同面積あるということだ。

この夏、その歴史を伝える板が、14世紀ヨーロッパに起源を持つ鍵盤楽器クラヴィコードとして生まれ代り、清水寺に奉納された。清水寺 経堂ではこの奉納を記念した展覧会『silk road – 祈りの道』を開催する。

「人々の祈りが込められ、役割を終えた木材を何らかのかたちで伝えていけないか」。

『silk road – 祈りの道』展は、そんな思いと、音楽家で調律師、クラヴィコードの製作を手がける内田輝(うちだ あきら)氏との出会いによって生まれた。祈りの場とジャンルを超えた表現活動をつなぐことで、未来の仏教寺院のあり方を模索する清水寺のプロジェクト<FEEL KIYOMIZUDERA>の新たなプロジェクトだ。

▲クラヴィコードを製作する内田輝さん

寺院の鐘や、僧侶たちの唱えるお経の響き…、仏教における「音に対する意識の高さ」を感じたという内田さんは、かつての舞台板に音と関わる別の役割を与えようと、繊細な手仕事による一点もののクラヴィコードを完成させた。

「14世紀に考案されたクラヴィコードは、人間の声よりも小さい音量です。鐘の音とは対照的ですが、どちらも神仏に纏う気配を感じさせ、聴いた人の感覚を開かせる力は共通していると思います。…」。

▲クラヴィコードの仕上げには京都伝統工芸の力添えがあった。鍵盤の拭き漆は「西村圭功漆工房」によるもの。ほか、彫られた紋は「京源」、蓋の唐紙は「かみ添え」による。

展示では、内田さんのメイキングのプロセスを記録した映像作品と、奉納されたクラヴィコードを公開。さらに、会場の「清水寺 経堂」は通常、非公開のお堂で、釈迦三尊が安置され天井には墨絵の「円龍」が描かれた空間だ。こうした場の力とクラヴィコードの存在感の関係性も見逃せない一期一会の展示となりそうだ。(文/田代かおる)End

▲展覧会会場となる「清水寺 経堂」

▲Akira Uchida/内田 輝
サックス奏者として活動後、ピアノ調律を吉田哲氏に師事。音の調律から観る様々な音との対話方法を伝える『音のワークショップ』を開催。楽器製作家、安達正浩氏の教えのもと、14世紀に考案されたクラヴィコード(鍵盤楽器)を製作。自ら楽器を作り、音を調律し、音を奏でる、この流れを基に活動する。
<FEEL KIYOMIZUDERA>では、本クラヴィコードを奏でる内田輝とミュージシャン、坂本美雨による奉納コンサートの映像を9月に公開予定。

silk road – 祈りの道

会期
2021/8/9(月)〜8/16(月)
開場時間
10時~17時
14(土)〜16(月)は、10時〜21時
会場
音羽山清水寺 経堂
京都市東山区清水1丁目294
入場料
無料(本堂拝観は有料)
詳細
https://feel.kiyomizudera.or.jp/project/1032