NEWS | アート
2021.07.30 16:09
英ロンドンのマルチディシプリナリー企業 Alter-Projectsが、2021年6月に開催されたロンドン・デザイン・ビエンナーレにてインスタレーション「Metronome」を公開した。
フランスのデザインスタジオ Servaire&Coと共同制作したこの作品は、ビエンナーレのアーティスティック・ディレクターであるエス・デブリンが提唱するしたテーマ「Resonance(共鳴)」に応えるものである。
無限大記号の形をしたメトロノームが展示室の中央に設置され、部屋の隅からは音が聞こえる。振り子の先端にはアロマディフューザーが取り付けられており、振れながら香りを放っている。
この作品は大型のメトロノームが振れるたびに音と香りを感じる、聴覚と嗅覚に訴える没入型のインスタレーションで、訪れた人は感覚と戯れながら、空間と記憶のギャップを埋めつつ、心の平穏を取り戻すことができる。
ビジュアル的にもメタファーとしても「共鳴」を感じさせるこの作品は、鑑賞者の感情的な記憶を深く掘り下げようとするもので、「無意識的な記憶」を描いたフランスの作家 マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」をモチーフにしている。
つまり、訪れた人はこの「Metronome」を通じて、自分自身と心の深層にある記憶とが再び結びつくような「時間の泡」を体験するのであり、この作品はこうしたさまざまな感覚を司る「祭壇」なのだとAlter-Projectsは語る。
2020年から続く大きな社会的混乱のなか、音と香りのシンフォニーによって、瞑想を促す落ち着いた空間へと鑑賞者を誘うことを目指した「Metronome」。何かに物理的に触れることなく、感覚を呼び覚まし、人間どうしのつながりを取り戻す、そんな感情に訴えかける空間を生み出す作品となっている。