東京・代々木上原にある、およそ築60年の民家を改装して誕生したオルタナティヴスペース「などや代々木上原」では、デザイナーの辰野しずかによる展覧会「A moment in time -ume-」が2021年8月7日（土）から9月30日（木）まで開催される。

辰野は、ものづくりの背景に見えるポジティブなエネルギーを見つけ、それらを膨らませて可視化してゆく、という視点から、家具や生活用品、ファッション小物のプロダクトデザインを中心に活動している。

デザインに取り組む上で、「伝統的な素材や技術は、自然の中から派生するものが多く、それらが本来持っている魅力を見つけ、引き出すことを素直に行っている」と語る辰野。そのプロダクトは、自然の風景を彷彿とさせ、透明感や清涼感を感じさせるものがある。

今回は、同氏にとって初となる自主研究による展覧会を開催。この数年にわたり「草木染」に心を惹かれているという彼女は、同企画を着想するにあたり、などや恵比寿の庭にある樹齢およそ60 年の梅の木と出会い、その梅の木を用いて染められた「飴」で制作された作品を展示する。

砂糖と水からできている飴は、温度や湿度によって溶け出してしまうかもしれないデリケートな材料であり、土に還る自然由来の素材でもある。展示が終了した後には、作品はすべて土に還り、形ははかなくも消えてしまうが、辰野はその後も作品が人の心や記憶の片隅に残ることを探っている。

▲辰野しずか