次世代を担う世界のクリエイターを育成・支援することを目的とした国際デザインコンペティション「LEXUS DESIGN AWARD 2021」は、世界66カ国・2,079件の応募作品の中から、デンマークを拠点に活動するデザイナー、ヘンリー・グロガウの「Portable Solar Distiller」をグランプリに決定したことを発表した。
グランプリ
PORTABLE SOLAR DISTILLER
「Portable Solar Distiller」は、太陽光を使って汚染された水や海水を蒸留し、きれいな飲料水を作り出す作品である。素材は現地で調達可能なものを使用し、高度な技術を必要としないなど、飲料水の確保が困難な人々に寄り添うアイデアとなっている。
また、この構造物は折りたたんで持ち運ぶことが可能で、広げて設置することにより、人々が集い日差しを避けるためのコミュニティ建築の役割を果たすこともできる。
同作品は、LEXUSが重視する3つの原則「Anticipate（予見する）」、「Innovate（革新する）」、「Captivate（魅了する）」に基づき、「Design for a Better Tomorrow」をもっとも具現化するものとして評価された。
受賞にあたり同氏は、「他の入賞者達の作品のクオリティやその進化を見ると、今年は誰がグランプリに選ばれてもおかしくないレベルだったと思います。そして、それぞれの多様な専門分野を惜しみなく教示し、作品へのアドバイスだけではなく、デザイナーとしてどう向き合うべきかという道を示してくれたメンター陣にも心から感謝をしています」とのコメントを寄せている。
▲「Portable Solar Distiller」／受賞者：ヘンリー・グロガウ（ニュージーランド－オーストリア／活動拠点 ： デンマーク）
ファイナリスト作品
CY-BO
「CY-BO」は、東京を拠点に活動するプロダクトデザイナー・阿部憲嗣の作品。生物の細胞の接合から着想を得た新しい梱包材で、ピースを組み合わせることで、さまざまな形状に変化させることができる。
何度でも組み替えて再利用でき、好みに合わせて小物やインテリアなど、梱包材以外の用途にも活用できるのが特徴だ。
▲「CY-BO」／受賞者：阿部憲嗣（日本）
HEARTFELT
ニュージーランドを拠点に活動する若手ユニットのゲイル・リー＆ジェシカ・ヴェアが手がけた「Heartfelt」は、ひとりでいることによる不安や精神的なストレスを和らげようとするデバイスだ。
パンデミックの時代における、リアルの人としての存在感がもつ意味を探求するもので、このデバイスが愛する人の鼓動を反映し、精神的なサポートや人と人とのつながりを促してくれる。
▲「Heartfelt」／受賞者：ゲイル・リー（ニュージーランド）＆ジェシカ・ヴェア（トンガ／活動拠点 ： ニュージーランド）
INTEMPO
ウクライナの若手建築家 アリーナ・ホロヴァチュクによる「InTempo」は、人前や公の場での精神的な不安感（パニック障害、社交不安障害など）に苦しむ人を支援するためのスマートフォンカバーとアプリ。
ユーザーは聴いている音楽のリズムに合わせて、スマートフォンのカバーに施された特定の部分に触れることで、今置かれている状況から意識をそらし、気持ちを落ち着かせることができる。
▲「InTempo」／受賞者：アリーナ・ホロヴァチュク（ウクライナ）
KNITX
「KnitX」は、マサチューセッツ工科大学メディアラボの学生として、アメリカで活動するインドネシアのエンジニア兼デザイナー、イルマンディ・ウィチャクソノによるテキスタイル作品。
日常生活で用いる繊維にジェスチャーや音、触覚に反応する機能を組み込んだ電子テキスタイルで、触覚やジェスチャーに反応して音楽を奏でることができる布や、ダンスと音楽が共鳴するインタラクティブなカーペットなどを作ることができる。
▲「KnitX」／受賞者：イルマンディ・ウィチャクソノ（インドネシア／活動拠点 ： 米国）
TERRACOTTA VALLEY WIND
東京を拠点に活動する中国のプロダクトデザイングループ Intsui Designが制作した「Terracotta Valley Wind」は、テラコッタ素材による気化熱を利用して、夏場の地下鉄駅構内を冷却させるシステムである。
安価で入手しやすく、水分を素早く蒸発させるテラコッタの特質と、列車がホームに入ってくる際に発生する風力という、これまで利用されていない資源に着目。エネルギー消費の削減に貢献する作品となっている。
▲「Terracotta Valley Wind」／受賞者：Intsui Design（シンガイ・カク、ホカ・セイ、イチライ・ロ、ウ・チョウ）（中国／活動拠点 ： 日本）
なお、これら6組の入賞者は2021年1月に発表され、ジョー・ドーセット、サビーネ・マルセリス、マリアム・カマラ、スプツニ子！の4名が務めるメンター陣が約3ヶ月にわたる継続的な指導を実施。当初のアイデアをブラッシュアップして、最終的なプロトタイプへと仕上げた。
これらのプロトタイプは、パオラ・アントネッリ、ドン・ゴン、グレッグ・リン、サイモン・ハンフリーズの4名からなる審査員に対してプレゼンテーションを行い、6作品の中からグランプリが決定した。
「AXIS」編集部
Webマガジン「AXIS」の編集チーム。デザイン専門メディアらしい情報から、日々の業務で溢れ出しそうなことまで、メンバーの有り余るエネルギーをもってお伝えします。
