MIT、「木部」から地下水のバクテリアを除去する
フィルター性能を発見

▲写真:Anderson Rian

マツやイチョウのような花が咲かない樹木の内部には辺材という部位があり、木の幹や枝から水を汲み上げる「木部」と呼ばれる道管が集まっているという。そして、この木部の道管は、天然のろ過装置となる薄い膜を介して、水や樹液から気泡を取り除くとされる。

こうした辺材がもつ自然のろ過作用に着目した米マサチューセッツ工科大学の研究チームは、これまでに辺材の枝の皮を剥いだ断面を使って簡易のフィルターを製造しており、バクテリアを効果的にろ過できることを突き止めていた。

▲Courtesy: N.R. Fuller, Sayo Studio

そしてこのほど、同チームはこれに改良を加え、日常生活で使えるろ過装置を新たに開発した。研究室での実験では大腸菌やロタウイルスといった病原体を除去するなど、この木部フィルターが汚染された水源や水栓、地下水の細菌を除去できることを確認したという。

さらに、簡単な技術によりフィルターの保存期間を延ばすことも可能になったそうで、木材ディスクを少なくとも2年間乾燥状態で保管していても、水の浄化ができるそうだ。

今回、研究チームはインドに赴き、地元住民とフィルターをテストするために、現地に自生する樹木から木部フィルターを作製。1時間で1リットルの水を浄化する交換可能な木部フィルターを備えた簡易ろ過システムのプロトタイプを開発した。

研究チームが目指すのは、汚染された飲料水が病気や死亡の主な原因となっている地域において、木部フィルターを大規模に利用できるようにすることだ。

そこで、さまざまなタイプの木部フィルターを設計・製造するための基準を掲載したオープンソースのWebサイトを開設。この技術を幅広いコミュニティに紹介したり、学生に木部フィルターを使った実験を促したりと、起業家や団体、組織のリーダーなどをサポートすることがねらいである。End