NEWS | アート
2021.04.07 16:45
米シアトルを拠点とするアーティスト Casey Curranはこのほど、同市にあるMadArt Studioにて展覧会「Parable of Gravity」を公開している。
このインスタレーションでは、会場全体に広がる崩れかかったように見える足場の上に、花咲く植物のようなたくさんのキネティックアートが飾られている。また、機械のきしむ音が聞こえるが、これによって昆虫や鳴いているカエル、つる植物の変化、滴り落ちる水が感じられるそうで、訪れた人を熱帯雨林のサウンドスケープへと誘うのである。
Curranが披露するのは「もうひとつの」自然のある世界であり、成長と崩壊のサイクルを繰り返す、移ろいゆく環境を観客は体験することになる。この作られた生態系が示唆するのは、私たちの世界にある自然のシステムと、人間である私たちが豊かな自然にもたらす影響とのあいだにある微妙なバランスだという。
キネティックアートは、レーザーカットされたポリエステル製の画用紙を使い、手作業で組み立てられている。素材の弾力性により、花はストップモーションの写真のように動くが、それは機械仕掛けの彫刻に生命の震えが生まれたかのようである。そしてこの世界は、ミニマルな形や色を使いながらも複雑な輝きを放つのだ。
また、「Anchor of Janus」と題した、小惑星「ガスプラ」を模した大きなアルミ製の作品も会場内に吊り下げられている。
神話と建築、天文学を組み合わせながら、自然に対する私たちの科学的な見方や精神的な関わりだけでなく、私たちの文化遺産のことを考えたり、過去の技術の進歩が今日の私たちの生活や経験に影響を与え続けることも考えたそうだ。
そして、Curranは「ヤヌス(Janus)」という言葉を使うことで、人間の進歩がもつプラスとマイナスの影響という二面性にも触れている。
この作品は新型コロナウイルスの流行以前にスタートしたが、次の世代に遺産を残すために、私たちをとりまく世界との関係について改めて考えるきっかけを提供するものとなっている。