近年、持続可能な社会のための再生可能エネルギーの利用への関心が高まり、特に太陽光発電は、個人宅から市町村、企業の事業所などに至るまで、さまざまな場面で利用されるようになってきた。しかし、ソーラーパネルの設置面積がそのまま発電量に比例することから、大規模発電のための用地確保の問題は、今後、随所で顕在化してくるものと考えられる。
この問題を解決すべく、インドのグジャラット州では、2012年に画期的な太陽光発電システムのパイロットプロジェクトをスタートさせた。それは、同州内の農地灌漑や飲料水の供給に使われる総延長8万kmにも及ぶ運河ネットワークをソーラーパネルの設置場所として利用するアイデアであり、まずは750mという短い区間でどの程度の成果が得られるかが検証された。
このソーラーカナル計画には、大きく5つのメリットがある。
1つ目は、自治体が所有する運河の上の空間を使うので、用地買収の手間やコストが不要となること。2つ目は、陸上に設置した場合と比べてソーラーパネルの温度上昇を抑えられるため、発電効率が約5%向上すること。3つ目は、生活圏を流れる運河がそのまま太陽光発電所として機能することで、送電ロスを最小にできること。4つ目は、運河からの水の蒸発を抑えられるため、効率よく水を供給できること。そして5つ目は、運河内の藻などの繁殖を抑えられるので、水質の改善や取水施設などの詰まりの抑制につながることだ。
先の750mの区間のみでも、年間で1MWの発電量(1MW以上で大規模太陽光発電[メガソーラー]に分類される)が得られ、同時に900万リットルもの水分蒸発を抑えられることが実証されたため、その後、同州はソーラーカナル計画を積極的に推進。現在までに運河総延長の30%まで設置が完了し、インドが2022年の目標とする太陽光発電量の1/5にあたる18GWの発電を担うまでになった。
グジャラット州の成功を見て、今では周囲の8つの州でも独自のソーラーカナル計画が進められており、そのなかには、インドで初めて100%ソーラーパワーで電力を賄う空港となったコーチン空港を擁するケララ州も含まれている。
ソーラーカナルは、持続可能なエネルギー政策を進める他国にとっても、示唆に富む施策と言えるだろう。