建築スタジオ TYRANTが、異なる6つの箱を3段に積み上げて
設計した「アーチ矯正歯科」

▲Photo:Tomoki Hirokawa

東京都八王子市郊外の住宅地に、矯正歯科を専門とする歯科医院「アーチ矯正歯科」が2021年3月に完成した。設計を担当したのは、建築家・松葉邦彦が率いる建築スタジオ TYRANTである。

今回は、JR八王子みなみ野駅から程近い閑静な住宅街の一区画に、2階建の歯科医院と5台分の駐車場を計画した。

エントランスは、前面道路から1.5m程度の高さまで盛土がされていたそうだが、敷地の大半を切り崩して高低差を解消。これにより、階段などを設けることなくエントランスまでアクセスできるようになったという。

▲Photo:Tomoki Hirokawa

建物は、プロポーションの異なる6つの箱を3段に積み上げた、積み木を彷彿とさせる構成を採用。まず、3つの箱を隙間をあけて配置し、その隙間の上に箱を2つ載せ、さらにその上にもう1つ載せているそうだ。

▲Photo:Tomoki Hirokawa

コンクリート打放の外壁を全面補修し、目地やPコンの跡を潰すことで、ひとつひとつの箱がマッシブな表情となり、積み重なりがより強調されている。

内部空間は、基本的に明度の異なる無彩色の仕上げとしているため、シャープな印象がある。その一方で、随所にフローリングや木製の家具、パーテーションで木質を用いることで、歯科医院で感じる独特な緊張感を和らげるような柔らかさも演出した。

1階には受付や待合、診察室、カウンセリング室、消毒技工室など診療関係の諸室を配置し、2Fは院長室、ドクタールーム、スタッフルームなどの諸室を配置している。

▲Photo:Tomoki Hirokawa

▲Photo:Tomoki Hirokawa

待合と診察室の通路を配した1階の2つの隙間の上に載せた箱は、下面がない空箱であり、それぞれ高さ5mを超える吹き抜けを持った空間が実現。

積み木のようなシンボリックな構成と、そこから生み出される空間とのバランスを丁寧に探りながら、多様で居心地のよい歯科医院の実現を目指したそうだ。End