インテリアデザイナー・鈴木文貴が奈良県山間地域に
自動車整備工場を改装したカフェ・ギャラリーを設計

▲写真:西岡潔

奈良県山辺郡山添村の山間地域に、自動車整備工場を改装したカフェ・ギャラリー「doors yamazoe」が2020年7月にオープンした。

インテリアデザイナーの鈴木文貴/やぐゆぐ道具店がデザインを手がけた同店は、店主が広告デザイン会社を経営しており、デザインの体験と思想を伝える場にしたいとの思いから、店主の社名「INtoOUT」から発想し、内と外・入口と出口・過去と未来などが空間のテーマとなった。

▲写真:西岡潔

▲写真:西岡潔

INとOUTの間にあるものとは、扉や窓である。それらは、空気や人が出入りするものでもあり、意識の区切りや人と風景を繋ぐものでもあるので、その開閉により体験や機能を生み出すことを構想したという。

▲写真:西岡潔

▲写真:西岡潔

また、扉や窓が新しい世界の入口として象徴的に存在する一方、農村とデザインという異質な関係性もまた、実体験により誰もが楽しめるようになることを目指した。

▲写真:西岡潔

▲写真:西岡潔

軒先には鋼管と壁を立て、室内を広く確保するとともに、窓が山や桜並木の風景を切り取るフレームとなり、採光と視覚効果により人々に内外の関係性を意識させてもいる。

▲写真:西岡潔

▲写真:西岡潔

カフェでは、鋼管を軸に扉が回転するので、さまざまに空間のボリュームと余白を変化させることができ、好きな居場所を見つけることも可能だ。

▲写真:西岡潔

▲写真:西岡潔

▲写真:西岡潔

さらに、小さな窓は車窓としても機能する。回転扉は自動車のシルエットをイメージしたものでもあり、かつて修理のため出入りした自家用車や農業車の記憶を残像として表しているそうだ。

▲写真:西岡潔

▲写真:西岡潔

ギャラリーでも、扉の開閉が空間領域を変化させる。扉は商品や展示に応じた可動間仕切りにもなり、導線にもなって、敷居を跨ぐことで意識の区切りを生み出している。

工場の躯体や傷は極力覆い隠さず、引き立てるように新規をインストール。これにより、過去を否定せず、歴史や物語をつなぐことができるようになった。

▲写真:西岡潔

▲写真:西岡潔

扉や窓が繋ぐものとは、中と外、人と物、昔と今、農村とデザイン。「doors yamazoe」は、その行き来を楽しめる場所となっている。End

▲動画:西岡潔