メイカーズに朗報。
複雑な形状も3Dプリント可能な、チューリッヒ応用科学大学の新機構ヘッド

一般に3Dプリンタは、「何でも立体プリントできる夢の造形機」と思われているフシがある。もちろん、日常的に自分で設計したものを3Dプリントしている人はよくわかっているのだが、3Dプリンタにも制約があり、その制約をいかに回避してプリントするかが腕の見せどころだったりする。

例えば、ポピュラーな熱溶解積層(FDM)方式の3Dプリンタは、その名の通り、溶けた樹脂を下の層から順に重ねていくことで造形が行われる。つまり、上になる層には、必ず支えとなる下の層が必要になるため、例えば、屋根のひさしのように、水平方向に突き出している部分は、そのままではプリントできない。プリントヘッドのノズルから何もない空中に樹脂を押し出しても、単に下に垂れてしまうためだ。

一応、垂直面から45度までの範囲であれば、上の層が下の層からはみ出すとしても、多少のオーバーラップがあるため、ある程度きれいなプリントが得られるが、それ以上の角度になると(つまり、水平に近づくほど)、本来の造形物にサポートと呼ばれる支えの部材を加えてプリントし、後からサポート部分を取り除くという手順を踏むことになる。サポートは、設計データを3Dプリンタが理解できる形式に変換するスライサーアプリが自動で付加できるため、ユーザーを煩わせることはないが、サポート部材の分だけプリント時間がかかり樹脂も無駄に消費する。また、形状によってはサポート部材の除去が面倒になり、除去面のスムーズさも失われがちだ。

この問題を解消すべく、チューリッヒ応用科学大学の研究チームが開発したのが、通常の直交する軸に沿って動くだけでなく、自身の回転軸を中心に旋回しながら樹脂を押し出すことができ、あらかじめ45度に傾いたノズルを持つ持つ新規軸のFDM3Dプリントヘッドである。

このノズルの傾きによって、各層の重なりは水平ではなく、斜め45度に重なった状態でプリントされる。そのため、水平方向に伸びる面にも層の重なりが生まれ、それが支えとなって、サポートなしにプリントできるようになる。

このヘッド用の3Dプリントデータは、専用のスライサーアプリで変換する必要があるものの、研究チームでは、このロータリータイプのプリントヘッドが既存のFDM3Dプリンタにも取り付け可能と考えており、実現すればメイカーズにとって大きな恩恵となるだろう。End