花王 メイクアップ研究所
肌の印象を客観的に評価する「肌評価AI」を開発

▲「肌評価AI」による化粧肌らしさ解析結果の可視化例

花王のメイクアップ研究所は、AI技術のひとつであるディープラーニングを用いて、肌の見た目の印象を客観的・定量的に評価し、これを画像化する「肌評価AI」を開発した。この技術を応用することで、化粧感や化粧くずれの程度、年齢印象などを客観的に評価することが可能になるとしている。

私たちは、肌の色・質感などのわずかな違いを瞬時に読み取ったり、顔や肌の印象を感じ取ったりすることができる。しかし、多様で繊細な肌印象の違いを人の目と同じレベルで評価する技術の開発は難しく、また特殊な装置を必要とするため、測定が容易ではないという課題があったという。

▲一般的なAIとこの手法の違い

そこで花王は、ディープラーニングのモデルに、年齢ではなく「素肌らしさ」など、肌のさまざまな見た目印象を評価するように学習させることで、「肌評価AI」を構築。髪、眉、唇など、肌以外の要素を極力排除するために、顔全体ではなく、もとの顔画像から小領域を切り出した画像「肌パッチ」を用いる方法を採用した。

20~70代の日本人女性512名のベースメイク塗布前後の画像を撮影し、この画像から判別精度がもっともよい17.8mm四方の領域を切り出して、計43,897枚からなる「肌パッチ」を作成。AIにこの肌パッチデータセット画像を学習させたところ、1枚1枚の肌パッチが素肌であるか、化粧肌であるかを92.7%の精度で判別できた。

▲サイズが異なる肌パッチ画像の例

▲化粧感評価AIによる解析結果可視化例

そして、学習に用いた512名中269名の顔画像について、AIによる結果と訓練された5名の判定者による化粧感の評定を比較。その結果、高い精度で相関を確認できた(R=0.72)ことから、この手法で化粧肌らしさといった印象を評価可能な「化粧感評価AI」が構築できたと推定。

▲「化粧くずれ度評価AI」による評価
異なる化粧下地を使用した上に同一のファンデーションを塗布し、直後、4時間後、8時間後、10時間後の化粧状態を撮影。画像をAIで解析し化粧くずれ度を可視化。

同社では、このAIを開発したパウダーファンデーションの素肌らしさの評価などに活用するほか、肌年齢の推定、化粧くずれの程度などの評価を行なうAIモデルをこの技術を応用して構築している。End