マルチモーダルな「ことばの森」を目指した
建築スタジオUAoが手がけた「那須塩原市図書館 みるる」

栃木県那須塩原市にある「那須塩原市図書館 みるる」は、2020年9月にオープンした公共施設である。JR黒磯駅に隣接しており、図書機能だけでなく、カフェや展示施設、テラスなども備えている。

設計を手がけたのは、建築スタジオ「UAo」を率いる伊藤麻理。那須塩原市の地域アイデンティティでもある「森」に足を踏み入れると、季節や天気、動植物たちによる僅かな機微といった刻々の変化を感じ、そのうつろいをマルチモーダルに受け止めながら、心を動かされるという。

そこでこの図書館でも、館内に点在する言葉(アフォリズム)や展示物、活動や人々によって起こる、多様なうつろいを緩やかな境界に表出。その機微の重なりのなかをまるで森のように自由に歩き回ることで、共感覚を生み出し、新しい気づきや学びにつながることを伊藤は意図している。

木立の樹冠の下端を模したリーフラインが、その高低差で緩やかに多様な居場所を生み出すとともに、放射状の本棚が木立の間から見通すように、活動が重なり合う風景を演出。さまざまな目的をもつ利用者たちを緩やかに包み込む、「森」のようなひとつながりの空間を目指したそうだ。

公共図書館は、たんに人が集まるサードプレイスとしての役割を終え、まち全体の発展に寄与することが求められている。

この図書館では人々の気づきや学びが活力の資源となってまちに還元され、次第にまちに波及し、大きな変化を起こし、新たな気づきが持続する。このプロジェクトでは、そのような公共図書館を形にしている。End