スマートフォンやタブレットデバイスをはじめとして、最近ではタッチ操作で機能する電子機器が増え、マン・マシン・インターフェースとしての物理的なスイッチの存在感は以前よりも薄れている。しかし、iPhoneによって、その潮流のきっかけをつくったアップルも、アップルウォッチや先ごろ発表されたオーバーイヤー型ヘッドフォンのエアポッズ・マックスでは、デジタル・クラウンと呼ばれる竜頭型のコントローラーを設けるなど、本来は適材適所で使い分けられるべきものと言える。
iPadの普及期には、デジタル絵本に慣れた2歳児が紙の絵本のページをスワイプ操作でめくろうとしたという笑えない話もあったが、特に子どもには、デジタルネイティブであっても、物理操作の面白さや可能性にも目を向けてもらいたいと思う。
おそらく、同じような思いからデザインされたのだろう。ベルリン在住のデザイナー、ハヨ・ゲバウアーが手がけたコラプス・ランプは、電源のオン・オフに外観の視覚的な変化とコードを引くという操作を連動させ、電気スタンドが命を宿したかのように点灯する仕掛けをつくり出した。
発想のヒントになったのは、プレスアップフィギュアと呼ばれる、台座の底板を押すと倒れ、放すと起き上がる人形の玩具だ。単純な仕組みではあるが、スイッチを入れる・切るという行為に寓意を含ませ、子どもにとっても消灯とともに就寝する「仲間」のように思えるところがユニークだ。