NEWS | サイエンス
2020.11.10 15:50
ファッション業界でもサステナビリティへの意識が高まるなか、デザイナー Jen Keaneが率いるロンドンのModern Synthesisでは、アパレル向けの再生可能なバイオマテリアルの開発を手がけている。
たとえば「This is GMO」というプロジェクトでは、遺伝子組み換えバクテリアを使い、スニーカーのアッパーを編み上げて彩色するという、未来の合成生物学の可能性を探求する取り組みを行っている。
Modern Synthesisは、海洋プラスチックにはファッション産業における合成糸や合成繊維が含まれており、染色工程も水質汚染をもたらしたとしている。そこで、地球に負荷をかけずにプロダクトを作るため、バクテリアや菌類のような微生物に着目した。
紅茶キノコによく見られるバクテリアは、ナノセルロースと呼ばれる天然繊維を生成。鋼鉄の8倍の強度があり、ケブラー繊維よりもしっかりとしているという。さらに、Keaneは微生物の成長プロセスを操作することで、「微生物織り」という新しい手法を開発、カスタマイズ可能で完全に堆肥化できる強くて軽い材料を作り上げた。
まず、2018年のプロジェクト「This is Grown」で、シューズのアッパーを成長させる製造プロセスを確立。
次いで、「This is GMO」では、合成生物学者 Marcus Walkerと協力して遺伝子組み換え技術を導入し、セルロースとイカ墨や髪の毛、皮膚に含まれる天然色素のメラニンの両方を生成する「自己染色バクテリア」ができあがった。
KeaneとWalkerが共同で取り組むのは、デザインとサイエンスが協力して生物学をいっそう採り入れた製造システムを構築することだ。このプロジェクトによって学際的なコラボレーションがさらに進み、合成生物学と遺伝子組み換えが身近なものになることを目指しているそうだ。