当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。
“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。
今日のトピック
イギリスの環境保護団体Extinction Rebellionが、イギリス政府に対してコロナと同時に気候変動についても対策を講じ、さらに深刻化し続ける環境悪化の影響から若い世代を守るよう要請するデモ活動を行いました。5月18日、ロンドンのトラファルガー広場には「Covid Today> Climate Tomorrow> Act Now」と書かれたバナーが掲げられ、2000足の子供靴が並べられました。終了後は、すべての靴が必要としている子供たちに寄付されたそうです。
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この活動で使われた子供靴は、子供たちの将来を案じる近隣住民や両親、教師からの寄付で集まりました。2000足も集まった事実を考えると、それだけの人々がコロナウイルスと同時に気候変動についても危機と不安を感じているということでしょう。デモ活動当日は、マスクをつけ感染対策をした最小人数の参加者で行われました。
イギリス政府は、5月10日にロックダウン緩和のための計画を発表。その中に自転車利用促進のため20億ポンド(約2800億円)の予算を計上した自転車専用レーンの工事などがありました。このような自動車の排気ガスを削減する効果のある対策もありますが、Extinction Rebellionはパンデミックの対応もしながら、気候変動への対処も積極的に行うよう政府に呼びかけたようです。
この活動を見てまず共感したのは、コロナ対策だけでなく、気候変動についても忘れてはならないという視点です。
大人数が集まり声をあげて意思表明することが多いデモは、コロナ禍では感染拡大のリスクが生じます。靴を置く行為は、直接参加しなくても多くの人々の意思を伝えられる優れたアイデアです。
クリエイティブとデモ活動が一体化した表現は、力強いメッセージとなり、整然と並べられた大量の靴から伝わってきます。まるで完成度の高いアート・インスタレーションです。多様なサイズや色、デザインの靴。そこから、どんな子供たちが履いていたかを想像し、世界のさまざまな文化や環境下にいる子供たちに思いは広がります。さらに子供たちが大人になり、生まれてくる子供の未来のために何をするべきなのか、冷静な考えに及びます。
今までのデモ活動でよく見られた、人々が集い強く大きな声で訴える方法とは異なり、見た人に考える余白を与える表現で意思を伝え、イマジネーションを広げる新しい手法です。Extinction Rebellion内にはオリジナルのアートグループが存在するそうです。それでクオリティの高い表現方法が実現したのでしょう。いままで気候変動問題に触れてこなかった人に、環境問題を考えるきっかけが広まることを願います。
Extinction Rebellion
イギリスの環境保護団体。2018年設立。生物や植物の大量絶滅を食い止め、気候変動の危険を最小限におさえるため活動している。