チリ警察がコロナ感染者を嗅ぎ分ける
「コロナ探知犬」を大学機関と共同で
養成訓練中

当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。

今日のトピック

チリ国家警察とチリ・カトリック大学(Catholic University of Chile)が共同で、コロナウイルス感染者を嗅ぎ分けるコロナ探知犬の養成訓練を7月から開始しました。特に無症状感染者を嗅ぎ分け、公共施設の再開促進に役立てることを目的としています。訓練期間は2週間から2カ月程度を想定しており、9月半ばまでに完了する予定です。

SPREADはこう見る

コロナ探知犬に選ばれた犬たちは、麻薬や爆弾などの探知犬として長年の実績があるゴールデンレトリバー3頭、ラブラドールレトリバー1頭です。犬には人間の50倍の嗅覚検出能力があり、1時間に250人を嗅ぎ分けられると言います。コロナウイルス自体に臭いはないものの、感染すると汗の臭いが変化するため、その臭いを嗅ぎ分けて感染者を発見します。感知すると犬はその人の横に座って知らせます。

犬の嗅覚にまでたどり着くとは驚きのコロナ対策です。しかし、さらに調べてみると、チリに先駆けて、イギリスでもコロナ探知犬が訓練されていました。

行なっているのはロンドン大学 衛生・熱帯医学大学院(London School of Hygiene & Tropical Medicine)、国立ダラム大学(University of Durham)、探知犬育成団体「Medical Detection Dogs(MDD)」の共同チーム。MDDは、がんや糖尿病、細菌感染に冒された人を犬の嗅覚を活用して発見するための研究を10年間続けてきた団体です。現在MDDの6匹の犬がコロナウイルス感染者のにおいを嗅ぎ分けるための訓練を受けています。この活動には英国政府も期待しており、50万ポンド(約6800万円)の支援をするほどです。チリ同様、公共スペースでの無症状感染者の発見に役立てられます。

この活動をクリエイティブと呼んでいいものか、と少し悩みました。ですが、コロナウイルスをなんとかしたいという思いから生まれた、既存のものを応用する発想と実行する行動力を踏まえて、この活動をクリエイティブと捉えました。困難に立ち向かうときには使えるものは何でも使うという姿勢に生きることに対する人間の力強さを感じます。

人にとっては生死に関わる重要な臭いも犬にしてみれば無数にある臭いのひとつに過ぎないことに気付かされます。そう考えると、感染者数が増加傾向にあるいま、過剰に緊張せず落ち着いて状況を判断できるような気がします。End

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。