何色のクルマ?と聞かれることはあっても、色名は?と聞かれることはあまりないと思います。
自動車の色にはそれぞれ名前がついていることをご存じですか。前回、香りのネーミングについて調べていたら、自動車の色名について深掘りしたくなりました。
日本の自動車は他国に比べて色相バリエーションの豊富さが特徴ですが、すべての色を実物大で見比べることは難しく、インターネットや色見本で想像して選ぶことが大半です。そのため、色の特徴を表現しつつも、イメージとのズレが生じにくいネーミングが重要です。しかしながら、クルマのキャラクターやユーザーの世界観とマッチしたネーミングも重要で、わかりやすいものから凝ったものまで多種多様な色名が存在しています。
そこで、2020年以降、国内で展開されている自動車の有彩色の色名を色相別に整理してみました。色名に含まれる単語の種類を①基本色(色を表現する名詞そのもの)、②有形物(輪郭があり境界が存在するモノ)、③無形物(自然風景や形容詞もこちら)で分類しています。
全体的に無形物からインスピレーションを受けている色が多いことがわかります。色の展開数がいちばん多いブルーでは約65%の色名に無形物が使われており、なかでも水・宇宙に関連するものがほとんどでした。有形物が多いブラウンやカーキでは宝石や天然鉱物がイメージソースとなっていました。天然素材や自然風景は思いがけない表情を見せてくれるため、いつの時代も私たちの感性を刺激してくれます。美しいモノや絶景を連想させる色名は多くの人に受け入れられやすいのでしょう。最近ではワクワクする気持ち、リラックスやヒーリングにつながる時間の過ごし方が連想される色名も見受けられ、モノからコトへの共感を大切にする動きが感じられます。
展開色数が20色以上あるブルー、レッド、ブラウンを見てみると、約25%が基本色名となっています。幅広い車格で長期的に使う役割を担った色はシンプルな名前になっていると思われます。一方で、ブルーグリーン、パープル、グリーンのように展開数が少なく、キャラクター性が強く出やすい色相のネーミングには基本色名が0%であることが大きな特徴です。万人ウケを狙うのではなく、そのコンセプトを前面に出したネーミングも含めてのデザイン性が強く反映されていることが推測できます。
今回、自動車の色名を深掘りしたことで、デザイナーが色を命名するに至るまでのメッセージを感じることができ、色は音楽や小説と同じ様に心に響くコミュニケーションツールの1つだと再認識しました。モノを手に取った人が色で幸せになることを大切にし、私たち塗料メーカーは製品の価値を高めてまいります。