当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。
“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。
今日のトピック
オランダ・アムステルダムを拠点とするデザインスタジオ「Studio 212 Fahrenheit」は、フローニンゲン視覚芸術センター(CBK Groningen – Center for Visual Arts)が主催する、社会的距離を再考するプロジェクト「At an appropriate distance(適切な距離)」のために国土面積から国民ひとりあたりの面積を割り出し、正方形で表現した「Personal Square」を制作しました。オランダ北部の都市フローニンゲンにある公園Noorder plantsoenで、7月6日から9月30日まで展示しています。
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オランダにおける社会的距離は1.5m。これを人との間にとるべき最小距離とした場合、最大距離がどれほどになるのかを考えて制作したそうです。国土面積を人口で割ると国民ひとりあたりの面積は、1.5mの約30倍にあたる一辺49.03m、面積2,404m²になります。この巨大な正方形を見て、現在の自分が行動している広さについて考えるきっかけにしてほしいとのことです。
「Studio 212 Fahrenheit」は、オランダの他にも、ドイツ、フランス、中国、米国、ノルウェーの国民ひとりに対する国土面積を計算しています。この6カ国の中でいちばん狭いのはオランダ、いちばん広いのはノルウェーで一辺267.88m、面積約71,759m²です。
ちなみに、日本では一辺約54.65m、面積約2,987㎡、東京都だと一辺8m、面積は67.07㎡です。山も川もあるので単純比較は難しいですが、東京がいかに密な場所か実感します。都内を歩いていても、駅の階段や信号待ち、歩道ですれ違う時でさえたった2mのソーシャル・ディスタンシングを守れないことがよくあります。都心でも社会的距離を保てるようにするには人口を東京から分散する考え方はありますが、現実を考えると実現には時間がかかるでしょう。いずれにしても東京一極集中は大きな問題と言えそうです。
「Personal Square」から発想し、自分が暮らしている東京で社会的距離を保つことの難しさを考え直すきっかけになりました。
Studio 212 Fahrenheit
アルバート・バーリング(Albert Buring)とポール・モルダー(Paul Mulder)によって設立されたデザインスタジオ。エンジニアや金属細工師、インテリアビルダー、プログラマーなど、10人のメンバーで構成されている。