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2020.07.30 16:15
建築家・藤本壮介らが設計を手がけた、フランス南部 モンペリエの新しいレジデンシャルタワー「L’Arbre Blanc」(フランス語で「白い木」)が2019年6月に竣工した。
2013年の同市の市議会が開催した設計コンペ「Folie Richter」では、街の建築遺産を称えるビーコンとなるような、環境に優しい店舗や住居を備えた大胆なプロジェクトが求められた。
そこで、従来のタワーのあり方を再定義するべく、藤本は建築家のManal Rachdi、Nicolas Laisné、Dimitri Rousselと共同で、ヒューマンな次元にフォーカスして、タワーの上にも下にも公共空間のあるデザインを作成。
1階は通りに面して開かれたガラス張りのスペースやアートギャラリーとする一方、屋上には居住者以外でも使えるバーと居住者向けの共有エリアを設置。低層階に住む人でも、ここから景色を楽しむことができる。
そしてこのタワーは、一本の木をイメージして、幹から枝のように伸びるバルコニーとファサードから突き出た日よけを設けるという、他にはないユニークな建築的特徴を備えている。無数にあるバルコニーとパーゴラは、屋外での生活を促すとともに、居住者どうしの新しいタイプの関係をもたらすものとなるという。
こうした屋外スペースは7~35m²で、見晴らしのよい景色を眺めることができ、プライバシーも確保。デュープレックスに住む人は、2つのバルコニーを行き来することも可能だ。
さらに、テラスのカンチレバーは、技術革新により世界最長となる7.5mを実現。室内と屋外が連続した例を見ないリビングルームで、1年のうち8割が晴天の都市で味わえる贅沢を満載している。
また、バルコニーは、太陽の光を求めて広がる樹木の葉のように配置。ファサードに対して効果的に日差しを遮り、日陰を提供しながら、斜めに吹く風を散らしてより調和した空気の循環をもたらすなど、南仏の環境に合わせたソリューションにもなっている。
藤本は今回のプロジェクトについて、「月並みな表現かもしれませんが、真の生活空間を創造することは、私の建築ビジョンに適うことです。これを実現するために、どんなプロジェクトでも気候やライフスタイル、美的感覚、スケール、近隣のランドマークなどのデータポイントを考慮に入れています。これは価値のある建築を立てるうえで不可欠なプロセスなのです」と語っている。