当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。
“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。
今日のトピック
コロンビアのエルドラド国際空港内のエスカレーターに5月末、ソーシャルディスタンシングを反映したサインがペイントされました。ただその直後の6月1日から同空港は、一般のフライトを停止。7月から再開しました。利用客には検温の徹底やマスクの着用が求められ、エスカレーターに加え、動く歩道にもソーシャルディスタンシングのサインが施されています。
SPREADはこう見る
あまりにダイレクトなサインでもっとなにかデザインのしようがあったのではないか?といったんは思いましたが、いやいや、なかなか強くてシンプルなサインです。赤いバツ印と黄色い足跡が、エスカレーター本体のグレーのメタリックと配色のバランスがとれてスッキリと見えます。現場での緊急性に対応して施されたものが十分機能している時、これを超えるデザインはあるのか?コロナ禍のデザイナーはどのように関与すべきなのか考えさせられます。
この他にも各国のエスカレーターにソーシャルディスタンシングに対応した施策が行われています。フィリピン・マニラのショッピングモールでは3段ごとに黄色い足跡が、シンガポールのIKEAでは、2段ごとに黄色い丸がペイントされています。バルセロナのカタルーニャ駅では、エスカレーターの乗り口に警備員が立ち利用者の距離を管理する徹底ぶりです。
エルドラド国際空港のバツ印とシンガポールの丸。この違いにデザインのヒントがあるかもしれません。比較するとバツ印の方が人々への行動の誘導がより確実になります。一方で、緊急性が弱まったときにはバツ印が必要以上に強いメッセージを与えるため、シンプルな丸の方が適切なサインになると感じました。デザインをその瞬間だけの行為と考えずに、時間軸を踏まえた変化の工程全体から考えると、エルドラド国際空港のサインに対してデザイナーが関与できることも見えてきます。
コロナ禍では、個人が状況に応じて自身の行動を判断する力が求められます。同様にデザインも状況に応じて柔軟な更新をする際はより配慮が大切になると感じました。イベントへの参加や旅行など以前とは取るべき行動が変化していることに対して先を予測し準備する力と、それに適した対応を考える柔軟性は欠かせないでしょう。そのためにも情報収集とその咀嚼力が鍵になりそうです。