NEWS | アート
2020.07.10 17:35
フランス出身のアーティスト Damien Bénéteauは2012年以来、私たちの世界を支配する無形の力を具体化するインスタレーションシリーズ「Variations」を手がけてきた。
新作となる「Variations in Space」(2020)にいたるまで、同氏が取り組んできたのはメカニカルで、なおかつキネティックでもオプティカルでもあるような作品である。そしてそれは、人間の知覚を通じて、時間の経過や世界の周期的な構造をはっきりとした形で捉えることができる装置なのだそうだ。
振り子運動によって揺れ動く球体は、スリットを設けたディスクを振幅に合わせて規則的に通過していくことになる。
ミニマルな幾何学的形状、金属がもつ冷たさそして、一定の緩慢な動きが組み合わさることで、暗くて静かなミクロコスモスが形成される。それはまるでもっともベーシックな物質の次元に還元された星のように、その意味を最小限にまで縮減してゆくのだ。
内側のエッジが輝くことで、作品の周囲には交錯した光と影が投影され、観る人の視線はそこにくぎ付けになっていくのだが、それによって半ば催眠状態にも陥ることになる。
この「Variations in Space」は、ますます大型で没入型の作品へと進化を遂げている。彼の作品は、オプアートよりもアメリカのポスト・ミニマリストの造形作品に近く、高い精度の科学的な知識と長きにわたる技術の反映を暗示させるものだが、今回はこれまで以上に科学的な知識と熟達した技術を融合させ、世界の基礎をなす法則を修正することを目指して、工夫を凝らして自然に挑んでいる。