当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。
“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。
今日のトピック
イギリスの建築設計事務所Foster + Partnersは、4月から約2カ月間にわたり、コロナ禍で自宅にいる子供たちを楽しませるプログラム「#architecturefromhome」を公式HPで順次公開し、建築の魅力を伝えました。
SPREADはこう見る
4月4日、まず想像力を発揮して超高層ビルを描くためのテンプレートが投稿されました。その後、都市をつくるテンプレート、建築家のスケッチのように木を描くワークシート、どうやって建物をつくるのかが描かれた絵本、建物のフォトストーリーのヒント、高層ビルにかかるテンション(張力)を学ぶための実験など次のプログラムまで1週間あけることなく次々に子供たちとその親に投げかけられました。
6月5日に投稿された絵本「The Flying Gherkin」は、ロンドンの金融街にそびえ立つ「ガーキン(ピクルスに使われるキュウリの意)」の愛称で親しまれている名物ビルが、ロケットに変身して世界に旅立つ物語です。観光名所として有名なセントポール大聖堂や、チーズ削り機のような形のビル「チーズグレーター」が意志を持ったキャラクターとして登場します。ちなみにこの「ガーキン」は、Foster + Partnersの設立者であるノーマン・フォスター氏(Norman Foster)の設計です。
いま振り返ってみると、未来を担う子供たちが、自宅待機の時間をどう過ごすのかはとても大事なことだったように思います。Foster + Partnersほどの組織になると社会的責任の意識が高いと想像できますが、その責務をしっかりと全うしている活動だと感じます。いきなりぽっかりとできてしまった時間は混乱とともにやってきて、子を持つ親としては、たいへんな状況でした。ただ、その状況をポジティブに考えると、#architecturefromhomeのようなプログラムを用いて、学校だけでは知り得なかったクリイエイティブな知識に触れる時間になったのかもしれません。コロナ以降の子供たちが想像力を発揮したアイデアでより良い未来を築くことを願います。
Foster + Partners
イギリスに本社を置く建築事務所。1967年、Norman Fosterによって設立された。ニューヨーク、香港、タイ、スペインなど世界各国に拠点を構える。