当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。
“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。
今日のトピック
米の疾病予防管理センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)でメディカルイラストレーター(医療関係の資料制作に特化したイラストレーター)を務めるダン・ヒギンズさん(Dan Higgins)率いるチームは、コロナウイルス病原体を3D画像化しました。その画像は、WHOが緊急事態を宣言した翌日の1月31日に一般に公開され、現在はWHOの資料として公式HPなどで使われています。
SPREADはこう見る
この3D画像は、目に見えないコロナウイルスをビジュアル化することにより広く警戒感を伝えるために制作されました。同時に研究活動への資料提供という目的もあり、ウイルスの外観だけでなく、断面図や構成するタンパク質の種類を解説する画像なども公開されています。
5月26日には、米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID:National Institute of Allergy and Infectious Diseases)が独自にこの3D画像を読み取り、3Dプリンターを使って立体化しました。教育機関で役立てられるよう制作されたそうです。大きさは直径約13cmほどで、実際のウイルスの色とは異なりますが、構造をわかりやすくするための配色が施されています。青い球状の物体から、オレンジや赤の突起物が出ています。この突起は、コロナウイルスが人に付着し感染するために不可欠なパーツなのだそうです。
当初コロナウイルスが引き起こす症状や感染力を情報として聞くだけでは「感染すると死んでしまうかもしれない」「どうやって防げばいいのだろう」など目に見えないものへの恐怖と漠然とした不安が大きくなるばかりでした。しかし、ウイルスの形状や詳細な構造を見たことで正体がわかり、さらにその模型を手で触れることで、より冷静に対処法を考えられる気がします。
東京の感染者数は、先日100人を超えました。米国では7月1日、1日あたりの感染者数が5万2770人となり、過去最多の感染者数を更新しました。世界全体で増加傾向は続いています。ここで再び身を引き締めなければなりません。改めてウイルスの姿を思い出し、どこかにいるウイルスの存在をイメージして緊張感を持続するのもひとつの手かもしれません。
Centers for Disease Control and Prevention
米国を拠点とする、科学的、生物医学的研究と教育のためのグローバルリソースを提供する機関。1998年設立。