外さずに食事ができるマスク
イスラエルの企業avtipusが、
製品化を視野に開発

当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。

今日のトピック

イスラエルの企業avtipusが外さずに食事ができるマスクを開発しました。外食時の感染リスクに対する手軽な解決策として、マスクの口にあたる部分が開閉する仕組みを導入。現在は特許を取得し、数ヵ月以内にマスクの製造を開始する予定。一般的な医療用マスク(1枚約60円)よりも200~300円ほど高い価格で販売される見込みです。

SPREADはこう見る

マスクの左端に口を開けるためのボタンがついており、それを指でつまんでいる間はマスクの開口部が開き、食べ物を口に入れることができます。動画にはこのタイプしか紹介されていませんでしたが、別のタイプではセンサーが反応して自動的にマスクが開くそうです。マスクについた小さなサーボモーターが装着時に重く感じそうですが、スムーズに使えるようになればかなり便利かもしれません。

複数の人たちとの食事は、会話などコミュニケーションを抜きには成立しません。飛沫感染の心配があるとわかっていても、食事中の会話のたびにマスクをわざわざ付けることは、ほとんどの人がしないでしょう。しかし、マスクをしたまま食事ができるなら、現状よりは安心して人と一緒に食事と会話を楽しめます。また、開発者が意図している通り、レストランや居酒屋などの飲食店の再興の手助けにもなるでしょう。

ただ、このマスクの使い方には、ちょっとしたテクニックが必要になります。タイミングがずれるとマスクに食べ物がついて汚れてしまうかもしれません。しかし、そもそも多くの食事に使う道具は練習して使い方をマスターします。私たちが普段当たり前に使いこなしている箸も、幼いときに持ち方を教わりました。ナイフとフォークも同様。そう考えるとこのマスクの使い方を習得することも普通のことと思えてきます。

現状このマスクには「食べ物で汚れそう」「使い捨てなのかどうか」など、いくつか懸念点はあります。ただ、一見奇抜に見えるものほど多くの人が気づけない将来を予見している可能性があることを私たちは学んでいます。このマスクは、マスクの口を開けるとその奥にほんとうの口があるという、まるで口が2つあるように見える不思議な装着物になるかもしれません。しかし、このようなアイデアが未来でどう展開するかをポジティブに想像し、粘り強くアップデートし続けていくことが大切だと思います。End

avtipus
イスラエルを拠点とする、コンセプトから製品や機械の開発を得意とする企業。さまざまな分野の特許を取得している。

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。