デザインスタジオ「24d-studio」が改修した
職住融合住宅「House of Many Arches-アーチだらけの家-」

▲Photography:Kei Sugino

平川富実雄とマリナ・トプノバによるデザインスタジオ「24d-studio」が手がけた、神戸市にある築35年の木造住居兼事務所の改修計画「House of Many Arches(アーチだらけの家)」が竣工した。

もとは賃貸アパートを含む事務所兼住居で、阪神・淡路大震災後に住居と事務所だけの職住融合住宅に改築。その後空家となり、今後の職住融合住宅の在り方を再定義する改修を目指した。

耐震性をはじめ、断熱、採光、通風などの環境設備面で不備があり、部屋の区分化が息苦しい雰囲気があった。そこで、開放的で快適な職住融合の生活スタイルに合わせるためのアップグレードを実施。

▲Photography:Kei Sugino

プロジェクトの重要なエレメントはアーチ開口耐力壁の導入で、これを計画的に配分。構造的な補強をしつつ、日常タスクの機能に応じて各部屋の収縮と拡張が行われ、スペース同士の折衝が発生するなど、各部屋に空間的流動性が生まれた。

▲Photography:Kei Sugino

耐震補強では柱と梁の補強に加え、束石を排除して、既存の布基礎をベタ基礎へ変更することで1階の天井高を増加。これにより、スタジオのワークスペースは開放的となり、事務スペースとワークショップスペースもシームレスにつながった。

▲Photography:Kei Sugino

▲Photography:Kei Sugino

スタジオの玄関口はミーティングスペースだが、照明デザインを展示するギャラリースペースにも変換できる。アーチ開口部は全体的な白塗装と対照的に淡色塗装とし、空間の特徴を強調しつつ、隣接する部屋とのユニークな関係を構築。さらに、アーチ開口部はビルトイン収納と展示台になったり、プライベートなワークスペースにもなっている。

▲Photography:Kei Sugino

住居空間へのホワイエは、スタジオと北側の外部廊下よりアクセスが可能。吹き抜け階段の手摺面は2階アーチ開口部とリンクさせることで、各階との関係性を示唆している。

▲Photography:Kei Sugino

また、このアーチ開口壁は、既存丸太梁までの高さに設定することで、新旧のエレメントの融合し、天井高を拡張。2階住居空間は全体的に自然光で溢れ、見渡しのよい日常風景が生まれるなど、異様ながらも調和された空間関係が表現されている。

▲Photography:Kei Sugino

2つのバルコニーは、イエローとマゼンタの鮮やかな色彩を採用。これらの独特の視覚効果とその輝度により、室内への明るい雰囲気を与えている。日常のなかの非日常、それがいつしか暮らしのニューノーマルへと変貌することを目指した建築となった。End

▲Photography:Kei Sugino