当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。
“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。
今日のトピック
オランダのデザインデュオ、 Studio Lennarts & de Bruijnは、コロナ禍の人々をポスターで励まそうと「STAY SANE,STAY SAFE」プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトでは「医療従事者を励ますこと」「人々に安全な自宅待機を促すこと」の2つのテーマを設定しポスターを募集。寄せられたポスターは、無料でダウンロードできるため、出力して病院などへ寄贈する他、好きな場所に掲出できます。オランダ国内の病院から希望があれば印刷したポスターを主催者から送ることもできるとのこと。現在87カ国から約2500点のポスターが集まっています。
SPREADはこう見る
プロジェクトのきっかけは、病院で働く友人からの、院内にポスターを飾りたいという依頼でした。その後すぐに医療従事者を励ますポスターの需要は、世界中にあると考えプロジェクトがスタートしました。無料で配布されているテンプレートを使えば誰でも応募でき、寄せられたポスターはすぐにHPに反映されます。
HPでは、国別に分類されポスターのビジュアル、作者の連絡先が明記されています。Newsページでは病院や街中に掲出されたポスターの情報が投稿されており、この活動の目的である医療従事者の元に届いていることが確認できます。
これだけの数の作品を閲覧していたら国ごとの特徴が見えてきました。
まずはオランダ。主催者の地元であるため、投稿数が多いです。タイポグラフィ系の作品が半数以上で、大胆で力強い印象。黒、赤、白が目立ち「STAY HOME」「STAY SAFE」を言葉で伝えるものが多いようです。Thomas&Jurgenの作品は、マンションの窓が整然と並んでいるように見せかけて、よく見ると「ALONE TOGETHER!」という言葉が浮かび上がります。家の中では孤独かもしれませんが、壁の向こうには同じ状況の人がいるから寂しくないというメッセージが感じられます。
次に日本。全体的にイラスト作品が目立ち、明るくポップな雰囲気の「Stay Home」ポスターが多く、家にいることが好きな人々が制作したように感じます。配色は幅広くさまざまな色が使われていますが、グリーンやピンク、イエローなどパステルカラーのソフトなタッチが目立ちます。あないすみ-やそこ氏の作品は、外出自粛中の家での行動を個性的で親しみやすいイラストで表現。ソファでゲーム、ヨガ、PC作業など、自粛中の生活を満喫している様子が描かれています。
最後に南米からブラジル。全体的にカラフルで配色が賑やかな印象です。日本やオランダと比べると、写真を使った作品の割合が多いようです。「STAY HOME」の他に、手洗いやマスクの着用を促すものがありました。Keka Balduinoの作品は、顔が真っ二つに割けた内側にまた同じ顔がある仏像の写真が使われています。「go inside and STAY→」のコピーからは、外出自粛中の時間を使って、普段忘れがちな「自分と向き合うひとときを過ごそう」というメッセージを感じます。自宅にいる時間を有意義にしたい思いが表れているようです。
これらのポスターには、その数だけメッセージがあり、それぞれがコロナウイルスに立ち向かうための意気込みが感じられます。みなさんも2500点のなかから、いちばん自分にしっくりくる「STAY HOME」を探して部屋に飾ってみてはいかがでしょうか。
Studio Lennarts & de Bruijn
オランダを拠点とするクリエイティブスタジオ。ビジュアル・アイデンティティ、ブランディング、アートディレクションなどの分野で活動している。2015年設立。