当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。
“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。
今日のトピック
ケニア南西部に住む小学生スティーブン・ワムコタくん(Stephen Wamukota)が、足踏み式の手洗い装置をつくりました。
SPREADはこう見る
スティーブンくんは、椅子や机の絵を描くことが好きな少年。夢は、将来医師になることだそうです。きっとその2つが重なって、手洗い装置をつくるきっかけになったのでしょう。材料は、木材と貯水用タンクに液体石鹸のみ。無骨なつくりですが足でレバーを踏めば両手を洗うことができます。コロナウイルス感染を防ぐ手段として、お父さんの助けを借りてつくられました。
じつは、これと同じような装置は、すでに存在しています。そのひとつは、1980年代にジンバブエのジムワット博士が発明したTippy tapです。木材、貯水タンク、石鹸、紐があればつくることができることと、単純明解な機構が功を奏して、発明されて以来、さまざまな国や地域に広がり、使い方に応じて素材を変えたりと多くのバリエーションが生まれました。初期のTippy tapでは、タンクの代わりにひょうたんが使われていたそうです。
現在蔓延しているコロナウイルスの感染予防としても手洗いは欠かせませんが、もともとTippy tapは、石けんで手を洗う習慣が根付いていない地域に手洗いを普及させ、不衛生が原因で亡くなる命を救うことが目的でした。時代が変わっても手を清潔に保つことの重要性は変わりません。
このような装置は、短期間で手洗いの習慣を導入できる有効な手段です。今回設置された地域の人たちは、手を洗える喜びと同時に、これで病原菌で命を落とさずに生活できるという大きな安心を得たことでしょう。