非日常の風景から外出自粛を伝える
動画「Stay home, Singapore」

当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウィルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。

“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探っています。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。

今日のトピック

シンガポールは4月3日、リー・シェンロン首相がCOVID-19の感染拡大を抑制するための措置を発動しました。それは「サーキットブレーカー」と呼ばれ、ロックダウンを避けるためにその直前で下した判断だと言われています。

その状況下でニュースチャンネルのCNA(Channel News Asia)がステイホームを呼びかける動画「Stay home, Singapore」を制作。人がほとんどいなくなった街並みを映し、外出自粛の効果が出ていること、それを継続していかなければならないことを国民に伝えました。

SPREADはこう見る

4月10日、YouTubeに投稿された動画は、「SINGAPORE SWICHES OFF」というタイトルから始まります。普段の人混みからは想像できないような街の風景。日本のような四季がなく、1年を通して熱帯性モンスーン気候のシンガポールでは、涼しくなる日没後に散歩を楽しんだり、大衆的なホーカー(屋台村)に毎日のように繰り出して賑やかに過ごす人々の姿が印象に残っています。生活の一部と言えるようなホーカーの椅子が、使用禁止テープで封鎖されている映像は、いかに国民が非常事態を受け入れ、その措置が徹底しているかが伝わるものです。人気のないショッピング街や観覧車を望む広場の閑散とした風景は、寂しい反面、現状を考えれば当然のことと感じます。

今回の措置が、回路遮断器に例えられたことから、動画の最初に「SWICHES OFF」という言葉を入れたのでしょう。ライトアップやイルミネーションが光り輝くシンガポールのイメージとも重なります。また「サーキットブレーカー」は、株価の急激な値動きの際に混乱を最小限に食い止め、投資家が冷静になる時間を確保するの取引停止の意味も持ちます。ひとつの言葉からさまざまな想像につながることで、国民の理解を促していると感じます。

緊急措置が解除されると気持ちが緩んでしまい、再び感染者数が増えてしまう可能性は捨て切れません。第二波に見舞われないためにも、日常がここまで変わってしまうというこの動画が参考になるのではないでしょうか。End

▲本プロジェクトをレーダーチャードで示しました。6つの属性のうち、成果物のデザイン性を「Creativity」で評価しています。「Pure & Bold」は目的に対して一途な強さを感じるか、やりきっているかという、SPREADが自らの仕事において大切にしている視点です。