NEWS | サイエンス
2020.04.30 14:15
国立科学博物館の研究主幹である奥山雄大氏(植物研究部)は、東京都立大学、龍谷大学、京都大学、中国・浙江理工大学との共同研究で、これまで解析困難であった「カンアオイ類」の進化・多様化の道筋を、超並列DNAシーケンシングによる巨大データを利用した新しい遺伝子解析法により解明したと発表した。
カンアオイ(寒葵)は、徳川家の家紋で有名な葵(フタバアオイ)の近縁にあるもので、冬でも葉が残る常緑性からその名がついている。またその花は、葉の下で地面すれすれに真っ暗な口を開けて咲き、色や形、香りが種ごとに著しく異なることから、植物愛好家の間で人気があるという。
日本列島で急速な多様化を遂げた植物だそうで、日本に分布する全種のうち1種を除く49種が日本固有。こうした多様かつ個性的な日本のカンアオイ類がどのような進化の歴史やメカニズムの結果から生じたかという問題は、植物学的にも進化生物学的にも興味深いテーマだとされる。
しかし、その進化系統関係は、従来の手法では解明が困難であったという。そして今回、日本産50種のうちの46種を含む、カンアオイ類(ウマノスズクサ科カンアオイ属カンアオイ節)のほぼ全種の系統関係を完全に解明。
今回新しい遺伝子解析法を取り入れることで、きわめて解像度の高い分子系統樹の推定が可能とわかり、現在の種分類体系がおおむね遺伝的に妥当であることも確認。古くから1万年に数kmしか移動しないとも言われてきたカンアオイ類の非常に低い分散能力が、その著しい地域固有種の進化に関与することを裏付ける結果となったそうだ。