アップル、ナイキ、北米トヨタ、吉岡徳仁氏がデザインしたフェイスシールド

▲北米トヨタ製

COVID-19こと新型コロナウィルスが世界中に蔓延して猛威を振るうなか、社会貢献を考える企業による医療現場用のフェイスシールドや人工呼吸器の製造と提供の発表が相次いでいる。

特にフェイスシールドは、布製のマスクと同様に個人でもつくれるほど単純な構造だが、供給不足が続いており、実際に日本の病院でもクリアファイルやゴム紐などの身近な材料を組み合わせて職員の方々が自作している光景も報道された。自作できるとはいえ、そのために本来の医療活動のための時間が奪われてしまっては本末転倒であり、大企業による物的な支援は大きな意義を持つものだ。

そこで今回は、デザイン的な観点からアップル、ナイキ、北米トヨタ各社のフェイスシールドについて考察し、デザイナー吉岡徳仁氏の試みにも触れることにした。後に続く企業や、自作を考える人の参考になれば幸いである。図版は、各社公式のツイッター映像や写真から構成している。

まず、北米トヨタのものは、透明の薄い樹脂板を曲げたシールドと3Dプリントされた耳掛け+額当て、そして額当ての内側に貼られたクッション材からなり、クッション材には梱包などに使われる薄手の発泡性緩衝シートがカットして使われている。耳掛け部分の後端の突起に輪ゴムを掛けて、装着時のフィット感を出す仕組みだ。

3Dプリントされた立体的なパーツを用いたことで3つのなかでは最も工業製品らしい仕上がりだが、出力にやや時間がかかり、配送時に分解してもややかさばることが難点かもしれない。

▲ナイキ製フェイスシールド

ナイキのものは、同様のシールドに額当てのウレタンスポンジを両面テープで貼り付け、固定は紐と長さ調節用の留め具で行う構造になっている。紐と留め具は、おそらくナイキがスポーツウェアやバッグ類などに用いているものの流用で、潤沢な在庫を活用して迅速な製造を目指したと考えられよう。シールドの輪郭は、わずかな差だが、ナイキらしいスタイル重視の感がある。

▲以下、アップル製

CEOのティム・クック自らがツイッターの動画で紹介したアップルのフェイスシールドは、シールドと額当てを同じ透明樹脂板でつくり、組み立てと頭への固定をシリコーン製のバンドで一度に行うシンプルなもの。わずか2つの素材でつくられた、3つのパーツのみで構成されているところに、同社らしさが出ており、量産性も高そうだ。

シリコーンバンドが特注品の可能性もあるが、この程度のものであれば既製品でも調達できそうでもあり、両端の斜めカットも組み立てを容易にするうえで簡便かつ合理的な処理となっている。あえてラテックス・フリーと書かれているのは、ゴム素材アレルギーの人への配慮だ。

もう1つ、アップルのフェイスシールドで特筆できるのは、顔とシールド間の距離を2段階で調節できる点である。確かに顔の形状や鼻の高さによっては、シールドの前面が顔に近くなりすぎて快適性が損なわれる可能性もあり、シンプルな構造で調節機能を実現しているのは、やはり素晴らしいといえるだろう。

また、北米トヨタのフェイスシールドもそうだが、顔の前面だけでなく、側面も耳の辺りまでカバーすることが意図されている。

ちなみに、装着者がメガネを使用している場合には、デザイナーの吉岡徳仁氏が樹脂シートに簡単な加工を施すことで装着できるフェイスシールドのデザインを公開している。

いずれにせよ、それぞれに手持ちのリソースで、迅速にできることをするという姿勢は共通しており、これが刺激となって良きフォロワーが生まれることに期待したい。End

▲吉岡徳仁氏による提案