NEWS | アート / 建築
2020.04.10 15:00
建築家・瀧尻賢とアーティスト・寺本愛との共同プロジェクト「TEAROOM」(ティールーム)が、京都府南丹市にある聖カタリナ学園 京都聖カタリナ高等学校の4階に竣工した。
満月を思わせる丸鏡や掛け軸を模した姿見、和室を彷彿とさせる竿縁天井などが抽象的にプロットされ、屏風を連想させる壁面には松や手、タオルの絵が控えめに描かれている。実は、この空間は同校の女子トイレである。
瀧尻は2018 年、「強くしなやかな女性」をテーマにした先鋭的な3階の女子トイレ空間を手がけていた。「生徒が以前よりトイレをきれいに使うようになった」と職員から好評を得て、4階女子トイレのリニューアルプロジェクトが実現。
今回の学校側の要望は、同校のイメージカラーである「黄色」を取り入れることのみだった。そこで、寺本とともに新しい空間の在り方を提案。フィクションとノンフィクションの不思議なバランスが醸し出される寺本の絵により、建築とアートが融合できる可能性を瀧尻は感じたそうだ。
まず、瀧尻が全体の骨格部分を構成。それをもとに寺本が校内リサーチの際に記憶に残ったフォルムや質感、イメージを加えていった。そこから、「茶室」「ゆらぎ」といったキーワードが浮かび上がり、ふたりの頭のなかに膨らんだイメージがかたちとなった。
では、なぜ建築家はカトリックの精神が根付く学校のトイレに茶室の要素を取り入れたのか。なぜアーティストは学校の日常的な風景を壁に描いたのか。それはこの空間に「不便さのなかにある豊かさ」を内在させたかったからだという。
このトイレから感じ取ったことがこれから社会に出て行く生徒たちの将来のなんらかの糧になることを願ったという瀧尻。こんなトイレが自分の通う学校にあったら、なにかがちょっと楽しく変わりそうな気がする、という期待を込めたプロジェクトである。