NEWS | サイエンス
2020.04.01 16:23
東京大学生産技術研究所の田中肇教授、黒谷雄司博士課程大学院生(研究当時)の研究グループは、液体が固体の上を流れるとき、ある流速を超えると液体が固体表面上をスリップしているように見える現象が知られているが、その機構を解明した。
これまでも、液体と固体の間に気体相が形成されると仮定すると、スリップ現象を自然に説明できることは知られていた。しかし、流れによってなぜ気体相が液体相から出現するのかという疑問は、未解明のままであった。
同研究グループは、液体の粘性が密度に依存することに起因して、流れにより密度の揺らぎが増幅され、その結果、流速の増大により密度の揺らぎが増大し、ついには気体相が生成されるという新しいメカニズムを示したのだ。
この成果は、液体と固体の間のスリップ現象の物理的起源を解明し、その制御の指針を示した点に最大のインパクトがある。
スリップを誘起することができれば、流体の輸送に伴うエネルギー損失の低減につながるなど、実用的にも有益な成果といえるだろう。