NEWS | 建築
2020.03.26 14:07
フランス南西部、大西洋に面した海岸のあるリゾート地 スラック=シュル=メール(Soulac Sur Mer)に、建築家 Nicolas Dahanが手がけた「Wooden Villa」が完成した。
松林のなかにたたずむこの250平米の別荘は、木材工学の技術を巧みに利用したシームレスな建築で、床と天井は寸法を合わせているという。私たちの視線は松林と室内を行き来し、足は暖かい砂地から室内のしなやかなオクメ材のフローリングへ自然と進んでいく。
「松林に入ることは家のなかに入ること」と同じだというDahan。この敷地自体がすでに建築で、マツやオークの木が強風から守り、視界にはないが海はとても近いので、波の音が日々のリズムを刻んでくれる。寝室やリビングには自然があふれ、空気が流れる場所にこの家はあるそうだ。
敷居という概念を再考して、従来のような正面玄関はなく、リビングから入ってもいいし、5つある寝室の1つから入ってもよい。
屋根は136個のカラマツ材のケーソンでできており、床は136枚のオクメ材パネルを使用。アメリカの平屋建ての別荘をイメージしており、床と天井は建築家 ジョン・ロートナーのオープンな建築という考えから生まれた技術が求められた。
このカラマツ材は湿気に弱く、建設中は材を守るために敷地内に倉庫まで作った。家具で行うような磨き仕上げとし、シャドージョイントとすることでネジやクギは目につかず、家の内外に独特の流動感が生まれている。体育館に使われるような中央の長さ16mの梁は、仕上げによって家のなかの一部となった。
スライド式のガラスドアの高さは2.20mが一般的だが、ここでは3m超とすることで、明かりを取り込むことができ、高級感も演出。
また、家の3分の2をガラス壁としているために重みが足りず、風が強い日には屋根が飛ばされるおそれもあった。そこで金属を用いて重みを与え、セメントの壁で家を固定。木材とガラスを限界までつきつめた建築で、それゆえ強みも弱みもあわせもつ。日本風にいえば、家は家族の一員であり、十分にケアしてあげなければならないのだ。