PROMOTION | ファッション
2020.03.05 17:24
1989年、カナダ・バンクーバーで創業したARC’TERYX(アークテリクス)は、「最高のマテリアル」「最高の技術」「革新的なデザイン」を追求し続けるアウトドアブランド。2009年に誕生したARC’TERYX VEILANCE(アークテリクス ヴェイランス、以下VEILANCE)は、ARC’TERYXが培ってきた先進技術を、都市での生活に最適化させた究極のアパレルラインだ。
日本での2020年春夏コレクションの発表に合わせて、VEILANCEのデザインディレクターを務めるTakaと、マーケティングマネージャー のTurner Heidiが来日。Takaに、VEILANCEのモノづくりや都市生活のためのデザインについて聞いた。
身体と一緒に動く建築のようなウェア
Q:VEILANCEはどんなブランドですか?
Taka ARC’TERYXという究極的なアウトドアブランドがルーツにあります。アウトドアウェアは、気候コントロールシステムのようなもの。人間の身体があって、身体を覆うベースレイヤー、ミッドレイヤー、一番外側にシェルがあり、環境ごとにどのようなレイヤリングをして快適に保つかという建築にも近い考えに基づいています。ARC’TERYXもVEILANCEも、身体と一緒に動く建築のようなウェアと言い換えることができます。
ARC’TERYXが最新テクノロジーを使った究極のアウトドアウェアなら、VEILANCEは日常からインスピレーションを得た究極のアーバンウェアと言えます。
Q:両者のデザインの違いは?
Taka ARC’TERYXの商品は、アウトドアでの使用を基本としながら、それぞれのアクティビティに特化したデザイン。クライミングに用いるウェアには、バックパックのショルダーハーネスなどに干渉しづらいチェストポケットは付いていますがハンドポケットは付けていません。行動中に使いにくいポケットがあることによる重量の増加、携帯性の低下を防いでいます。
一方、日常で使うVEILANCEのデザインはミニマル。余計なものをつける足し算のデザインではありません。基本はソリッドのワントーンで、縫製する糸に至るまで色指定をし、完璧なソリッドを実現しています。
それでいて機能性を備えています。冬場に、寒い屋外と暖かい屋内の移動を繰り返す都市生活者は、アウトドアとはまた違った過酷な環境にさらされています。都市での日常生活における環境や動作を、ひとつのアクティビティのように限定することはできません。そのため、朝、家を出てから夜、家に帰るまでを総合的にカバーする多様性が求められるのです。
VEILANCEでは、ブレザーのような現代のアイコニックなアイテムをベースに、テクニカルな生地と構造でアウトドアとは異なるアーバンウェアを成立させています。アウトドアで培った技術やノウハウを活用し、都市生活をいかに快適に暮らすかがVEILANCEのモノづくりの根底にあります。
Q:両者に機能的な違いはありますか?
Taka 生地に求めるパフォーマンスは、ARC’TERYXもVEILANCEも変わりません。しかし、VEILANCEでは、着用時にこすれてシャカシャカと音がしたり、肌触りが固かったりする素材は使いません。あくまでも、日常着として心地よいと感じられる生地を使っているのが、VEILANCEの特徴です。
Q:VEILANCEの商品開発は?
Taka VEILANCEでは、すべてのサンプルを自分たちで試作しています。サンプルを作ってからテストすることで、生地単体のテストではわからなかった、リアルなシーンにおける課題を見つけ出すことができるからです。
VEILANCEの商品開発は、リサーチとデベロップメントに費やす時間が長いのが特徴です。すでに2023年シーズンの商品開発も進行しており、常に8シーズンほどのモノづくりを同時に動かしています。サンプルをテストし工場にフィードバックするというプロセスを、少なくとも2、3回、場合によってはもっと多く繰り返すこともあります。昨今は1ヶ月もあればデザインを描いて、製品化できるような時代ですが、それでは耐久性を含む、真に機能を伴うプロダクトを作ることはできません。
これまでにないものを作る「design from scratch」
Q:どのように革新的なモノづくりを続けてきたのでしょうか?
Taka ARC’TERYXは30年、VEILANCEは10年。若い会社ではありますが、現在のアウトドアシーンのスタンダードで、ARC’TERYXがもたらした革新は多く存在しています。かつてARC’TERYXが開発したものに、止水ジッパーがあります。ウォータープルーフのジャケットを作る際、ジッパーのソリューションを求めて、ARC’TERYXのデザインチームが試作したものがベースになっています。
ARC’TERYXにもVEILANCEにも共通している思想が、これまでにないものを作るという意味の「design from scratch」。デザイナーは、手を動かすことを重視しています。画面上など、平面でモノづくりをするのではなく、トルソーに着せた状態で、テーラードやビスポークのような立体的に開発をしています。
アウトドアメーカーは、外部のデザインカンパニーにデザインや商品開発を委託しているところが多いですが、我々はすべて自前。カナダに自社工場があるので、デザイナーが直接仕様の確認ができ、量産可能かどうかの判断もスピーディーです。さまざまな素材がストックされたデザインセンターは、ミシンが並ぶアナログの塊のような場で、デザイナーにとって最高の環境と言えるはずです。
Q:革新につながる課題をどのようにして見つけるのでしょうか?
Taka 今日もそうですが、常に試作品を着て過ごしています。その結果、試作品と商品で使用を変更することもあります。例えば、この「MINON IS COAT」の試作品には羽毛を使っていましたが、この商品の使用シーンの特性を考えて実際に発売したものは化繊に変更しました。それでも、ウォータープルーフでライトウェイトかつ、ソフトな手触りというコンセプトは変わっていません。
サンプルを含め、普段の生活に使って、「ここがこうならもっとよかったのに」という不満に気付き、「こうしたらもっとよくなるのに」と改善していくのは、VEILANCEもARC’TERYXも同じやり方です。ARC’TERYXでは、例えばクライミング向けアイテムの開発スタッフは全員クライマー。ある用途では高性能であるものの、あらゆる領域でも使える多様性は求めないという違いがあります。
Q:素材開発にも携わっていますか?
Taka ARC’TERYXでは、アメリカのWLゴア&アソシエイツ社とパートナーシップを結んでおり、新素材の共同開発などを行っています。1年間に2回以上はWLゴア&アソシエイツ社とサミットミーティングを開催し、毎月R&Dを行っています。
以前、アウトドア向けに開発した先進素材を「VEILANCEで使いたい」と伝えたら、「なぜ?」という反応がありました。VEILANCEとしては、いかに日常着に活用できるかといった視点から意見を出したり、フィードバックしたりしています。
2020年春夏のテーマは超軽量を追求した「Light」
Q:VEILANCEのカラーリングは?
Taka VEILANCEのコレクションは、毎シーズン約50%が継続商品、50%が新作という構成です。理由は、VEILANCEの商品は耐久性を備えるべきだと考えているから。ここで言う耐久性とは、素材としての耐久性だけでなくスタイルとしての耐久性も含んでいます。つまり、長期間着ることができる、普遍的なウェアデザインを目指しています。
約50%が継続商品のため、シーズンごとのカラーリングは重要です。2020年春夏コレクションのメインテーマは、超軽量を追求した「Light」。それに合わせて、カラーリングは、Vincent Fournier(ヴィンセント・フルニエ)というフランス人フォトグラファーとコラボレーションしました。今季のカラーパレットは、彼の作品から抽出しています。ビジュアルも、Vincent Fournierによるもの。ユタ州にあるMars Desert Research Stationで、1日のうちで最も色彩がきれいに見える、日没のタイミングにフォトシュートしました。
Q:新作について教えて下さい。
Taka VEILANCEの定番に「MONITOR」というコートがありますが、今シーズンの「Light」というメインテーマに合わせて、軽量化したものが新作のひとつです。GORE-TEXはもともと軽量ですが、重さをさらに削減させています。レザーのような見え方をするおもしろい素材で、これをライフスタイルラインに完全防水仕様で使用しているアパレルブランドはVEILANCEだけです。
通常のGORE-TEXは、表地、メンブレンという防水透湿膜、裏地の3層構造ですが、「GORE-TEX SHAKEDRY」という3層のうちの表生地を省いた、防水透湿膜を露出させた素材を使っています。薄手のGORE-TEX SHAKEDRYは完全防水仕様で縫製できる会社はそう多くないため、ARC’TERYXで長年一緒にやってきた工場で生産しています。
撥水性に優れ、防水性、透湿性も高く、軽量かつ着心地もいいので、日本の梅雨の時期に最適なウェアです。携帯性に優れしわになりにくいため、小さく丸めてバッグに入れておくことができます。
Q:これまでにはなかったデニムパンツもありますね。
Taka 「CAMBRE PANT」というデニムパンツは、縦糸が綿で、横糸がポリエステル。ポリエステルの糸の内部は空洞になっているので重さが半減。横糸にポリエステルを使っているため、デニム特有の縮みもありません。もともと、Hollow Core Polyester(中空ポリエステル)というテクノロジーがあって、そこに天然繊維を融合させたらどうなるかという発想から生まれた素材です。
構造としては、デニムでありながらエルゴノミックな3Dパターニング。通常、デニムはフラットに作られており動きにくいですが、これなら日常の動きに対応してくれます。コンストラクションはダブルニードルではなくマイクロシームにし、さらに余計なシームをカットすることで、着心地や軽量化にも貢献しています。
もちろん、デニムなのでエイジングしますが、こうした天然繊維は、ARC’TERYXやVEILANCEにはない素材選びで、初めての試み。デニムに関しては、品質部門のマネージャーに「洗ったら色落ちする」と指摘されて、「これはデニムだから当然色落ちする」と説得するのが大変でした(笑)。
今回は、現代の制服やユニフォームのような存在とも言えるデニムを、VEILANCEとしてどのように解釈し新しい商品にできるかというトライで、開発に3年ほど費やしています。常に、もっと実験的なモノづくりをやりたいと考えています。
Q/トートバッグもさらに軽量になったそうですね。
Taka オフィシャルにはGORE-TEX PROとはうたっていませんが、防水仕様のトートバッグです。VEILANCEで定番のトートバッグを、今回は0.26 kgというライトウェイトに仕上げました。パッカブルで容量は20リットル。ハンドルが2種類付いているので、肩にかけても、手に持っても使えます。
今回、日本も含めて2週間でさまざまな国を訪れますが、自分用のエクストラバッグとしてこのトートバッグを持って来ました。もちろん日常使いにも適した、VEILANCE10周年を記念した限定アイテムです。
Q:最後にメッセージはありますか?
Taka 近年、アウトドアやスポーツのブランドと、ハイエンドなファッションブランドのコラボレーションによる、機能性を備えたアパレルが注目を集めています。そういったトレンドを活用して、トラディショナルなファッション、デザインを見ている方々にも興味を持ってもらえれば。2021年秋冬には、初のウィメンズを発表する予定です。
VEILANCEはテクニカルな日常着。どれも一度着始めると、普段気付かなかったことに気づくことができます。出張や旅行の荷物も小さくなるし、着ていることを忘れて、自分がやりたいことに集中できます。目標は、日常生活を進化させること。今後も、実験的なモノづくりを続けていきたいです。(文/廣川淳哉、写真/谷本夏)
VEILANCE Webサイト:veilance.com
商品についてのお問い合わせ:アークテリクス コールセンター 03-6631-0833