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2019.12.20 19:23
森をテーマにしたコンセプトストア「メッツァ/スコーゲン(Metsä/Skogen)」が、2019年11月にヘルシンキ中心部にオープンした。メッツァはフィンランド語、スコーゲンはスウェーデン語で、ともに森のこと。180㎡の店内には、ヘルシンキからクルマで45分ほどの場所にあるトラッペルゲットの森から木々や苔を移植。さらに森の音、森の香りもする店内に佇んでいると、本当に深い森のなかにいるような感覚に包まれる。すべてのものが森からインスパイアされたサスティナブルなフィンランド製のファッションアイテムや小物を販売するほか、スパやサウナ、ユニークなところでは「マッシュルームバー」まであり、五感で森を体験できるヒーリングスポットだ。
ヘルシンキ中心部に移植された森でエネルギーチャージ
この店舗をプロデュースしたのは、“フォレストアンバサダー”という肩書を持つカリタ・ペルトネン。彼女は起業家として20年以上にわたり、エコロジカルなワークウェアの会社を運営していた。ビジネスは成長していたが多忙を極め、約1年半前に疲れ果てて働けなくなってしまったという。そして、心身の健康のため、飼い犬のルーディーとほぼ毎日、森に通っていた。
「最初の頃はルーディーの散歩のために、強制的に近くのトラッペルゲットの森に行くよう自分に課していました。しかし、しばらく通ううちに、鳥の声、森の香りに癒されて、私は少しずつ活力を取り戻していったのです。いつのまにか森は私の安息の地となり、自ずと足が向かうようになっていました。そして紅葉が美しいある秋の日、感謝しながら森を歩いていたときに、以前の私と同じように忙しくて森に行くことができない人にも、この森の素晴らしさを届けたいと強く思ったのです」。
フィンランドは自然が多く、森が身近にあるように思えるが、ヘルシンキで働く人々は、忙しすぎて森へ向かう時間のない人も多いのだという。
サスティナビリティ、エコロジーへの徹底したこだわり
メッツァ/スコーゲンのテーマは、スローリビング、エコライフスタイル。そして扱うものは絶対的にサスティナブルなものにこだわっているという。
デザインの責任者であるアンネ・トルンルースは、ファッションデザインも手がけ、スタイリストやアートディレクターとしても活躍するマルチタレント。彼女はメッツァ/スコーゲンのアイテムについて、「ファッションアイテムはすべてエコ素材でできていて、どの工場でつくられたかなど、生産工程も透明性の高いものです。サスティナブルであることに加え、ローカルなものづくりにもこだわっています。現在のフィンランドブランドも他国同様、その多くを中国で生産し、自分たちでつくることを忘れかけていますが、自国でのものづくりを見直して、地元の産業を元気にしたい。フィンランド製であることに意味があると思っています」と説明する。彼女がデザインするオリジナルアイテムのほかにも、“ソウルメイト”と呼ぶ同じ価値観を持った企業やクリエイターのものをセレクトしている。
「私が森に助けられたように、人々を助けたい」というカリタ・ペルトネン。都会で働く人々にスローダウンしてもらうためのスポットとして、ランチブレイクや仕事帰りにヒーリングスムージーを飲みながら白樺の葉のフットバスを楽しむなど、短時間でエネルギーチャージをできるようなコンテンツを揃えている。今後は、キノコ狩りツアーといったリアルな森を体験する企画も考えているそうだ。フォレストアンバサダーの活躍に期待したい。