シンガポール・インド共同開発の脳卒中リハビリデバイス
「シンフニー」

脳卒中は一命を取り留めても麻痺が残るケースが多く、その程度は患者の年齢や出血部位によって変わってくる。投薬や理学療法による治療が一般的だが、どちらも限界があり、回復に時間がかかるとプラトーと呼ばれる停滞状態が訪れて、身体機能の一部が失われたままになってしまう。そうなると、患者は精神的に追い込まれ、社会復帰が難しくなる。

シンガポールのシンフニーとインドのエレファントデザインが共同で開発した脳卒中のリハビリデバイス「シンフニー(SynPhNe)」は、ヘッドユニットとアームユニットから構成され、脳からの信号と筋肉からの信号を捉えて両者を関連づけることにより、麻痺した部分の運動機能を短期間で回復させられる画期的な製品だ。

もともと脳には、部分的にダメージを受けて機能を失っても他の部分で補おうとする力があるが、それを自分自身で効率よく行う能力を私たちは持ち合わせていない。しかし、特定の筋肉を動かすための信号の流れを再プログラムするのを補助することは可能であり、このデバイスは、脳卒中患者が新たな脳の部位で発生する信号と、動かそうとする筋肉の信号をゲーム感覚で結び付けられるようにして、機能の回復を早めることに成功した。

通常、脳卒中のリハビリは、5、6カ月から1年ほどかかるのに対し、シンフニーは15~20日間で機能性の回復が見られ、2、3カ月のうちに日常的な作業が行えるようになるという。5、6年間もプラトー状態だった高齢者が機能回復した例も、報告されている。

このデバイスのプロトタイプは、ワイヤーだらけで装着に20分もかかっていたが、エレファントデザインが2つのユニットに集約してスマートな外観を与えたことで、3、4分という時間の短縮と装着時の心理的な壁を取り除くことに成功。フィードバック用のゲームも好きなキャラクターが選べるようにするなど、患者が積極的にリハビリに取り組むためのモチベーションを高めることで、トータルな治療効果を上げている。End