NEWS | サイエンス
2019.11.29 14:53
マサチューセッツ工科大学のある研究チームは、植物の種子にコーティングを施すことで、発芽中にも必須の栄養素を供給できるようにし、生産性の低い土壌でも作物を栽培が可能になる、という実験結果を発表した。
この研究では生糸を使って種子をコーティングし、そこに窒素肥料を自然に生成するバクテリアの一種を加えて植物の発芽を促すというもの。実験では、塩分が多くてそのままでは種子が正常に発育できない土壌において、発育を成功させることができたという。
実際、窒素固定を行うバクテリアは世界中の土壌で自然に発生するが、それぞれの地域にはその土地ごとの種類があって、人工的な窒素肥料を自然の土壌環境以外で保存するのは非常に困難だそうだ。しかし、生糸は生物物質を保存できるとされ、「根圏細菌」として知られる窒素固定バクテリアを用いた。
さらに、水が少ない条件下で有機体が生存に用いる糖類「トレハロース」を栄養素として加えた。これらの要素を水に浸し、そこに種子を数秒間入れればコーティングは完了する。一般的な絹は水溶性があり、土壌にさらされるとすぐにバクテリアを放出する性質があるそうだ。
チームでは、安価で特別な機械もいらないこのプロセスによって、農業に適さないとされる土地でも耕作ができることを期待している。