ひとり問屋・日野明子が選んだ日本の道具たち
ひとてま上手の愛用品たちを紹介します

一ヶ月に亘り、リビング・モティーフで特集が組まれた「日本の道具・ひとてま上手の愛用品」も、10月15日が最終日。この連載を担当しているひとり問屋である私、日野明子が選んだ品々を、最後の週末前に、改めまして、かいつまんで駆け足でご紹介。(会期始めの写真につき、現在、在庫がないものもございます。ご了承くださいませ)

Simpleglass.のグラス

木下宝さんが心機一転、自身の核となるプレーンなグラスのシリーズをまとめて「Simpleglass.」という潔い屋号を付けました。

この薄さ、軽さ、このかたちで飲む(呑む)味わいは極上です。

高野竹工のトング

9月26日に行われた、ヤスダ屋・安田花織さんのトークイベントでも、話題の中心となった、“せいろ”。おいしくできますが、湯気が怖い、という方にオススメなのが、この高野竹工さんの36センチと長い竹製トング。これだけの長さがあれば、湯気で火傷の心配もありません。

井口工房の器、中山木工 x LUFTのクッキングアンドサーヴィングスプーン

沖縄からは二チームをご紹介。人気は高いが、なかなか本州ではお目にかかれないと言われる「井口工房」。井口春治さんと悠以さんの工房です。沖縄の焼き物「やちむん」というと、ぽってり厚いイメージがありますが、井口工房の器は程よい薄さ。そして、潔いコバルトの絵柄が料理に生えます。

井口さんをご紹介くださった沖縄を拠点にするデザイナー「LUFT」の桶田千夏子さんが名護市の「中山木工」と組んで、沖縄の相思樹(ソウシジュ)で作ったクッキングアンドサーヴィングスプーンは、豆料理、ヨーグルト、チャーハンなど、“ポロポロ”していたり、“どろっ”としている料理の料理とサーブにぴったりです。

こいずみみゆきさんのうつわ・つちや織物所の鍋つかみ

▲会場のこいずみさんのコーナーとつちや織物所さんの鍋つかみ。

埼玉県で作陶されるこいずみみゆきさん。一見、型で作ったように見えますが、すべてろくろの手作業。“手”で作る意味のようなものは使うと解ります。微妙な“ゆらぎ”は、決して型では作れません。そっけないですが、縁の加減などの塩梅がよく、毎日使いたくなるうつわです。

こいずみさんの色にぴったりなので、一緒にコーディネイトしたくなるのが奈良の「つちや織物所」さんのテーブル小物。これまた一見、量産に見えながら、非常に手をかけた作りになっています。

その丁寧さ、繊細は触ってみると解ります。会場で触られたみなさまは、「気持ちいい!」と、口々に言われます。こだわりの糸と絶妙な織のバランスはいつまでも触っていたくなります。

山一の飯台

過去の投稿でもご紹介しました、木曽の地場問屋「山一」さんからは“匠飯台“と銘打ったシンプルな飯台をご紹介。

桶は箍(たが)が落ちる。落ちたら修理が必要。それが面倒だから使わない、という声を聞き、箍のない飯台を作りました。

「もともと、あった技術を使っただけ」と、さらっと説明してくださいましたが、見えないように内側でしっかり接合する技術はまさに「匠」の技。塗装で固めるなどしていません。白木の状態なので、酢飯も美味しく切ることができます。もちろん、このまま料理を盛れば、食卓が盛り上がることは間違なしです。

三鈴陶器のオリジナル土鍋

四日市の萬古焼が日本の土鍋産業を支えている所以は「ペタライト」にあります。

どうにか割れにくい土鍋を作りたい…と研究していた四日市の土鍋屋さんが、釉薬に混ぜていた南アフリカ原産のペタライトに注目。これを混ぜると、割れの元にもなる“温度差による膨張”が低くなることを発見。1959年に完成したと言われています。

長年、この地で土鍋を作り続けている三鈴陶器さんにお願いしたのが、このオリジナルの土鍋。ごはん鍋と蒸し鍋が来ていますが、蒸し鍋は陶製のすのこを外せば、普通の土鍋としてお使いいただけます。新鮮味のあるこの色。一年中、大活躍します。

陶芸家・大谷桃子さんのうつわ

海外でも大活躍の信楽の陶芸家・大谷桃子さんのうつわ。ハスや芭蕉の葉が気持ちよく描かれています。

煮物や揚げ物で、料理が茶色くなってしまっても、この桃子さんの絵に助けられます。料理映えもしますが、使わない時も飾っておきたくなる、存在感のあるうつわです。

能登燃焼器工業の七輪

能登半島、珠洲は七輪の産地。能登燃焼器工業さんは、原料となる珪藻土の採掘、切削して成型、そして焼成して仕上げています。粘土のようにこねるのではなく、切削して作り上げる「切り出し」の七輪は、少しでもヒビが入ったら作業が水の泡、の真剣勝負。

この”本物“の七輪で焼く、秋の味覚は最高です。

富貴堂の銅鍋と薬缶

新潟・燕の富貴堂さんが一つ一つ、叩いて仕上げる銅鍋と薬缶。叩くことで金属は締まり、表面積が広がります。“いい味にするため”に通常より板厚のある銅を使っております。

肉に伝わる火加減、煮物の味の染み渡り、揚げ物の温度。料理をするたびに“叩いて作った厚めの銅鍋がもたらす美味しさ”を実感します。黄色味を帯びた色目は、錫を焼き付けているため。そのせいか、緑青が出にくく、扱いやすいのも嬉しいです。

SŌK Erica Suzuki ceramicsのうつわ

昨年に引き続きのSŌKさん。人気につき、うつわは全てなくなってしまいましたが、週末には追加が届きそうです。お楽しみになさってください。


一気にご紹介いたしましたが、実はこれで全部ではありません。週末の台風は心配ですが、10月15日まで開催しております。皆様のご来場をこころよりお待ちしております。End

前回のおまけ》

▲写真:大沢和義

iwatemo チームは9月にフィンランドの展示会に向かっていました。ハッリ・コスキネン、ヴィッレ・コッコネンの両氏は、陶芸家・大沢和義氏へのリスペクトから、展覧会のファサードに大沢さんのお名前も並べてくれたそう。大沢さんのお姿は、右側にガラスに写りこんでます。

日本の道具 ひとてま上手の愛用品

日時
2019年9月13日(金)〜10月15日(火)
*10月1日(火)は臨時休業
*10月12日(土)、13日(日)は台風により休業
会場
リビング・モティーフ
東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 1F