素材としての存在感を示す「光」
そこから生まれる多様な色と質感

照りつける太陽の下で過ごしていると、涼やかさや透明感を感じさせる質感に目が惹きつけられます。特に最近は世の中の動きに敏感なクリエイターの間で「光」への注目が集まっており、光の使いこなしによって質感や色の表現の幅が広がっているように感じます。

▲LOUIS VUITTONの水や汚れに強いPVC素材を使用したバックパックとポーチ(上)。リフレクト素材を使用しており、角度によってオーロラのように色が変化する。同じくLOUIS VUITTONから、埋め込まれた光ファイバーによって、モノグラムから7色の光が透過するバッグ(下)。

モノに光が当たると光の反射・吸収・透過といった現象が起き、これを目が捉えることで人はモノの質感や色を認識しています。光の見え方を活用することで、多様な色の表情を生み出すことが可能です。先ほど紹介したものから例を挙げると、クリア素材は光を多く通す材料によって透明感を表現しています。ユニコーンネイルは角度に応じて異なる色の光を跳ね返すことで、虹を切り取ったかのような色彩のグラデーションを描きます。また、光そのものの色を変化させれば、パワフルで鮮烈な色合いのネオンカラーも表現可能です。

▲透明感のあるクリアネイル(人差し指)や幻想的な虹色の輝きを放つユニコーンネイル(親指と薬指)を融合させた夏らしいデザイン。

最近は時の移ろいとともにモノと光の相互作用を変化させることで、表情が変わりゆく様子を楽しませようとする製品や空間演出もよく目にするようになりました。その移り変わりを見ていると、光はもはやただの背景ではなく、ある種の素材として重要な役割を果たしていることを実感します。

▲ANREALAGE「2018-19 A/W COLLECTION“PRISM”」(左 通常時/右 フラッシュ撮影時)
角度によって異なる色の光を跳ね返す素材を使用した服。フラッシュ撮影をすると全く違う色が浮かび上がり、その色は見る角度によって変化する。

▲吉岡徳仁「ガラスの茶室‐光庵」(写真:https://www.axismag.jp/posts/2017/11/84803.html
ガラスでつくられた水の波紋のように煌めく茶室。天井のプリズムに太陽の光が降り注ぐと虹色の光が現れ、天候や季節の移ろいによってその表情が変化する。

例えありふれたものだとしても、光を使いこなすことでそのものの印象をガラッと変えるほどの効果があります。また、光の質感や表現が感じさせるテクノロジーや先進的なイメージが、他人との差異を強調したい人々の共感を集めているように感じます。

私たちD-LOGのカラー提案活動も、ただカラーバリエーションを展開するだけでなく、時代のニーズに応えたこれまでにないような意匠も追求するようにしています。企画のヒントとなるような面白い色や質感に出会ったときは、なぜそのような見え方をするかを考え、コーティング技術によって狙いとする光の見え方を再現していきます。これからもモノと光が織りなす多様な表情を大切にしながら、人の目を惹き付けるような色や質感をデザインしていきたいです。