これからの銀行の姿とは。
米キャピタルワンが組んだのはピーツ・コーヒー&ティー

既存の金融機関は、いわゆるフィンテック企業が展開する新興のデジタル金融サービスとの競争に晒されている。そのなかで、独自のデジタルサービスで対抗しようとする銀行もあれば、フィンテックのスタートアップと組んで新たなビジネス展開を模索する銀行もある。

フィンテック企業の強みの1つは店舗を持たない身軽さだが、逆にインターネットバンキングを推進してきたクレジットカード系の金融会社のなかには、あえて固定費のかかる店舗を設けて強みにしようとする動きも見られる。たまたまボストンで訪れたキャピタルワンの営業所は、まさにそのような試みを象徴する存在だった。

実は、カフェのつもりで立ち寄った店が、そのような営業所だったため驚いたのだが、一見すると、ATMを備えたコーヒーショップとしか思えない。しかし、入ってすぐのところに「私たちは、銀行があなたの暮らしに寄り添うべきだと信じます。その逆ではないのです」というマニフェストが掲げられていることから、事業主は銀行なのだとわかった。

キャピタルワンがパートナーに選んだのは、スターバックスよりも古い歴史を持ち、グルメコーヒー事業の手本にしたピーツ・コーヒー&ティーである。スターバックスほどのビジネス拡大策を採っていないチェーン店だが、このような新しい形態の店舗に取り組んでいることから、先進性が伺える。また、キャピタルワンのクレジットカードかデビットカードを使うと、飲み物が半額になるお得な特典もある。

カウンターはコーヒーショップそのもので、相対する場所にキャピタルワンのATMが設置されている。そして、最大の特徴が、店の一番奥に位置する大型ディスプレーとデスクだ。デスクには、お金に関する質問に答えたり、マネー・コーチングなどのワークショップの受付を行う、カフェ・アンバサダーと呼ばれる専任の銀行スタッフが常駐する。

店内はアメリカ的な基準ではさほど広くないものの、つくり自体はとてもゆったりして、置かれた調度類もバラエティに富み、リビングルームを思わせる一角もある。

日本でも、書籍のライブラリーを整備して、さまざまなジャンルのセミナーを定期的に開催するコミュニケーションスペース「d-labo」を併設したスルガ銀行のような例はあるものの、ごく普通の街なかに溶け込む存在としてはキャピタルワンのほうが一枚上手と言える。次世代の銀行の店舗デザインとユーザー体験は、このように、より身近で透明なものとなっていくのだろう。End